5月17日に「合意形成のための交渉プロセス」第2日を開催しました。(報告者:後藤 尚紀(生命理工学院 生命理工学系 修士2年 ToTAL1期生)

ToTAL Program Report

5月17日に「合意形成のための交渉プロセス」第2日を開催しました。

Day-2 of "Negotiation Process for Consensus Building" was held on 17/May.



・科目分類:リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/Leadership, Followership and Consensus Building (LFCB)

・科目名:TAL.W.501-01 リーダーシップ・グループワーク基礎 S

・プログラム名:合意形成のための交渉プロセス

・ファシリテーター:渡邊真由、元一橋大学 特任助教

・開催日時:5月17日(金)13:30~16:30



 「リーダーシップ・グループワーク基礎S」科目のプログラムの一つである「合意形成のための交渉プロセス」の第2回が、2019年5月17日に行われました。第1回に引き続き、元一橋大学特任助教の渡邊真由先生をお招きし、交渉の考え方や進め方について、ロールプレイを通して実践的に学びました。第1回同様、ToTAL登録生に加え、AGL生、OPEN生合わせて、13名が参加しました。

(1)統合型交渉

 今回はまず、一対一の統合型交渉のロールプレイを行いました。第1回に実践した分配型交渉は、結果によって勝ち負けがはっきりする交渉であったのに対し、統合型交渉は、当事者双方にとってより良い結果を模索することで、win-winな関係を目指す交渉です。ロールプレイのテーマは「スポーツメーカーとプロバスケットボール選手間のスポンサー契約」。二人一組のペアをつくり、一方はメーカーの交渉責任者を、もう一方は選手の代理人を担当しました。各自、事前に配布された資料をもとに戦略を立て、ロールプレイに臨みました。

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メーカーは、昨年バスケシューズへの参入を決めたばかり。広告塔として、若手選手との契約を模索していましたが、つい最近、有望な若手選手との契約交渉に失敗し、何としてもその失敗を補填したいという状況にありました。一方、選手側は昨シーズン活躍したルーキー。こちらは学生時代の素行の悪さから、バスケ界での評判が悪く、スポンサー契約を結ぶことで、社会的信頼を回復したいという思惑がありました。

両者はそれぞれこのような背景を抱えていましたが、当然、相手がどのような状況にあり、何を目的に交渉に臨んでいるのかについては、互いに断片的な情報しか持っていません。自分の手の内を明かすのは最低限に留めながら、相手の意図を探り合うことで、交渉を進めていきました。

ロールプレイ終了後、各ペアの交渉結果(契約金・契約期間・オプション)を比較し、検討しました。多くのペアは、交渉のゴールを契約金という金銭的価値に置き、契約期間中に当該選手が不適切な言動をするなどした場合は、契約の打ち切り、違約金を請求するといったリスクヘッジをオプションとして契約に含めていました。しかし統合型交渉の成功とは、互いが設定したゴールを(可能な限り)達成し、win-winの関係を築くことです。今回のロールプレイの場合、メーカーのゴールは「直近で失敗した契約交渉の穴埋め」、選手側のゴールは「社会的信頼の回復」であり、金銭的価値に重きを置く必要は、必ずしもありませんでした。したがって、たとえ契約金がゼロでも、この両者のゴールが達成されれば、統合型交渉は成功したことになります。

第1回の講義で行った分配型交渉は、「sellerは出来る限り高く売り、buyerは出来る限り安く買う」という、金銭的価値をゴールとする売り手と買い手のせめぎ合いでした。それとは対照的に、必要であれば新たに価値を創出する(今回の場合はオプションを付ける)ことで、当事者双方のゴールを達成する、統合型交渉の本質を感じることが出来たロールプレイでした。

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統合型交渉のロールプレイのようす

(2)複数当事者の交渉

 次に、6人ずつ2組に分かれて複数当事者の交渉を行いました。論点は、「公園に判事を称える噴水を設置するか否か」です。1人は議論を進行するメディエーター役を、残りの5人は行政の財政担当者や環境保全課など、噴水建設に関して意見の異なる役となり、交渉を進めました。私はメディエーターを担当しました。メディエーターの役割は、交渉に対して中立を保ちながら、議論を円滑に進行させ、みんなが納得できる合意案に交渉を導くことにあります。

一対一の交渉と比べ、複数当事者の関係性はより複雑で、ある人にとって満足出来る条件が、他の人にとっては不利益であるといった状況が考えられます。実際にロールプレイをしてみると、全員の主張を聴いて、それぞれの対立点や妥協点を抽出することは難しく、議論を盛り上げて交渉を進めることがなかなか出来ませんでした。噴水の設置に賛成か反対かといった切り口でグループを大別したり、噴水のデザイン・資金・メンテナンスといった具合に論点を整理したりすれば、より実りのある交渉が出来たかもしれません。

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複数当事者の交渉のロールプレイのようす

(3)2日間を通して感じたこと

 本ワークショップでは、2日間で3つのロールプレイを行いました。中でも私は統合型交渉が最も印象に残りました。「勝ち負けで終わるのではなく、交渉を通じて新たに価値を生み出し、当事者双方が満足できる(=win-winの関係を構築出来る)案を導き出す。そうすることで、交渉後も当事者どうしの関係を良好に保つ」。

これまで、交渉とは要求のぶつけ合いによって損得を決めることである、と捉えていた私にとって、この統合型交渉というスタイルはとても新鮮で、交渉プロセスに対する考え方が大きく変わりました。一方で、不利な結果を被らないよう、自分の利益を確保しながら、win-winを築くことに難しさも感じました。

また、交渉に臨む前の準備として、「絶対に譲れない最低条件(BATNA)」、「可能であれば到達したい野心的な目標(アスピレーション)」、そして何より「交渉の結果得たいもの・最も価値を置くものは何か(ゴール設定)」を決めておくことが、交渉にとっていかに大切であるかを学びました。

建設的な交渉を行い、当事者双方が最良の結果を得るためには、これらの事前準備は必須です。

この2日間を通して、交渉の考え方や進め方を実践的に学ぶことが出来ました。今後、交渉する機会を得た時に、必ず活かせるはずです。

最後に、お忙しい中このような機会を提供してくださった渡邊先生に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

(文責:後藤 尚紀(生命理工学院 生命理工学系 修士2年 ToTAL1期生)