ToTAL科目「リーダーシップ・グループワーク基礎」対象のワークショップ「Collaborative な研究環境をつくるリーダーシップ」を2025年5月19日(月)〜 7月28日(月)にかけて全6回行った。
| ファシリテーター | 八木翔太郎、長谷部可奈(株式会社コパイロツト) |
| 開催日時 | 2025年5月19日(月)から7月28日(月)まで、計6回開催 |
| 開催場所 | 大岡山キャンパス南6号館3階S6-309A |
概要
私たちは研究活動において、予期せぬ偶然や人との関わりを「予測不能な出来事」として、考えの枠外においてしまうことがある。本ワークショップでは、それらを流すのではなく、研究を広げ、深める資源として捉える新しい視点を学んだ。参加者は自身の研究活動を題材に、他の参加者と振り返りを共有しながら、少しずつ発想を転換し、次の行動計画へとつなげていった。
実施報告(全6セッション)
Session 1:プロジェクトの立ち上げ(5/19)
目的:研究テーマを「個人」の正解から「関係性」の中での貢献として捉え直す。
内容:ワークショップ全体の目的と進め方の共有を行った。そして、参加者各自の研究テーマを成果(個人に帰属するもの)と過程(関係性によって生まれるもの)に分けて捉えた上で、近くの人同士でディスカッションを行った。具体的には、「自らの研究を場として捉え直し(自分の環境、自分の歴史と方向性、新たな関係性)、これまでとこれからでアプローチがどう変わるか(Before/After)を言語化するワーク」を行った。
学んだこと:研究の最終的な成果は個人に帰属するかもしれないが、その成果を生み出す過程は他者との関係性や相互作用によって形作られているという、新しいプロジェクトの捉え方を学んだ。そして問いは誰とどのような場で立てられるかにより形を変え、そこに貢献の可能性が生まれることを学んだ。さらに研究を他者と共有することで新しい視点が開かれ、変化と出会いの入口を獲得する実感を得た。


Session 2:プロジェクトの課題特定と計画立て(フリクションの発見)(5/26)
目的:プロジェクトを停滞させる要因(フリクション)を特定し、行動を促すための具体的な計画を立てる。
内容:前回の授業で明らかにした「問題」をアクショナブルな単位である「課題」に落とし込むことを目標に、自分の研究を進める上で「やりたいけれど、なぜかできていない理由(フリクション=摩擦)」を言語化した。その後、課題を特定した上でそれらを解消する段取り(マイルストーン)を立てた。
学んだこと:行動を阻害する「やりたいができない原因」を「フリクション(摩擦)」として定義し、それを見つけ出して改善することがプロジェクトを前に進めるための重要なヒントになることを学んだ。フリクションを手掛かりに「問題」の要素となる「課題」を心理的・環境的な視点から具体的に捉え直し、特定することができた。そして特定した課題をもとに具体性を帯びたマイルストーンを設定することができた。


Session 3:計画の振り返り(ReflectionとDiffraction)(6/16)
目的:計画通りの実行結果を評価するだけでなく、自身の無意識に働いていた前提や思い込みを見直す「振り返り」の手法を体得する。
内容:Session 2で立てたマイルストーンに従って、計画通りに実践できたかを振り返った。その際、「Reflection(反省)」と「Diffraction(回折)」という2つの振り返り手法の概念について学び、それぞれの視点からフィードバックや気づきを共有した。
学んだこと:振り返りには「Reflection」と「Diffraction」の2種類あることを学んだ。「Reflection」は設定された基準に基づき良し悪しを判断する反省であるのに対し、「Diffraction」は光が回折するように、どのようにそうした「事実」や「ものの見方」が生まれたのかという観察の観点や背景に注目する振り返り手法であり、新しい視点や可能性を学ぶ機会となることを体感した。そして2種類の振り返り方法から発見したことを共有した結果、自分の見落としている点に気づくことができ、設定したマイルストーンを改めて見直す機会となった。


Session 4:プロジェクトの可視化とマイルストーンの再設計(6/30)
目的:プロジェクトの進捗管理に、具体的なタスクだけではなく心理的・環境的な要因も含めて可視化する。
内容:自身のプロジェクトに利用できる表計算シートなど、実際に具体例を使いながらプロジェクトを記録・管理する手法について学んだ。単なるタスクリストの作成ではなく、プロジェクトの停滞を引き起こす心理的な原因や関係性の課題もマイルストーンに組み込んで再設計するワークを行った。
学んだこと:タスクだけではなく、モチベーションの低下や関係者とのコミュニケーション不足など、心理的な原因も可視化し、それに対する具体的なアクションを計画することが、プロジェクトの成功に不可欠であると理解した。


Session 5:習慣化のメカニズムと因果関係図(7/14)
目的:立てた計画を一時的なものでなく、継続的な習慣にするためのシステム思考を学ぶ。
内容:プロジェクトの停滞をひきおこしている状況や習慣が、どのような要素(人、システム、環境など)によって維持されているのかを因果関係図を用いて構造的に把握するワークを行った。
学んだこと:プロジェクトを推進する習慣も、停滞させてしまうパターンも個人の意志だけでなく、それをとりまく環境や周囲の人との関係によって成り立っていることを学んだ。因果関係を可視化することで、研究プロセスを振り返る視点の一つを体得した。
Session 6:全期間の振り返りとパターンの共有(7/28)
目的:全6回を通じて得た学びを共有し、今後の実践へ繋げるための具体的な行動を定義する。
内容:前回のワークで発見した自分の陥りがちなパターンや、うまくいくパターンを、「パターン・ランゲージ」の形式で各自がまとめて共有し、現状分析・目標設定を行った。最後に、全講義を通しての振り返りを行い、参加者全員で、受講前後で何が最も変化したか、どこがハイライトだったかを振り返った。
学んだこと:全ての学びを具体的な「パターン」として言語化し、他者と共有できる形にまとめることで、このワークショップの経験を長期的な実践につなげるためのツールとして活用することが可能となった。最後に、どこが消化不良あるいはもっと試してみたいと思ったか、明日からどんな実践をしたいかについて話し合った。


感想
今回のワークショップを通じて、「研究の姿勢と関係性を結び直す」という新しい感覚を強く体感した。特にSession 2の「フリクションの特定」のワークでは、これまで漠然と「やる気がない」で片付けていた行動阻害要因が、具体的な課題として可視化される面白さを実感した。また、Session 3の「Diffraction(回折)」の概念は、私にとって最も大きな学びとなった。単に結果を評価するだけでなく、自分自身の無意識のうちに固定された視点や前提に気づくことで、全く新しい可能性や考え方に出会えるという発見は、研究活動における「問い」の立て方を根本から変える力があると感じた。さらに、Session 4、5でプロジェクトの管理や習慣化を「関係性」の視点から構造化する方法は、普段の研究活動にかなり役立つと感じた。
追記
私は今回、受講生として参加し、「関係性」の再構築が、停滞したプロジェクトに活力を与える源泉になるという効果を目の当たりにしました。今後、自分の研究においても、フリクションの発見やDiffractionの視点を取り入れることで、より開かれた、創造的な探究につなげたいと思っています。自分の研究をより進めるためのプロセス構築に興味のある方、研究者同士の交流により新しい発見を得たい方、自分の研究の現状に課題があり、改善するヒントを得たい方に、本ワークショップを強くお勧めします!
報告者
生命理工学院生命理工学系D1、ToTAL第6期生 村尾侑大


