「貿易ゲーム」ワークショップ(アントレプレナーシップ科目対象)を2026年5月14日に行った。
| ファシリテーター | 嘉村賢州(特定非営利活動法人 場とつながりラボhome’s vi 代表理事) |
| 開催日時 | 2026年5月14日(木) 18:00–21:00 |
| 開催場所 | S4-202, 南4号館2階, 大岡山キャンパス |
概要
本授業では、現代の国際社会の実態を反映させた「貿易ゲーム」を通して、交渉や協力の重要性について学んだ。参加者は2〜5 人のグループに分かれ、それぞれが「国」の役割を担い、限られた資源や道具を用いて製品を生産し、他国との交渉や協力を行いながら富の最大化を目指した。ゲーム中には市場環境やルールが変化する場面もあり、参加者は状況に応じて柔軟に戦略を変える必要があった。またゲーム終了後には、自分たちの行動で良かった点や反省すべき点について議論した。本ワークショップを通じて、交渉力や協力の重要性だけでなく、格差や変動の中で意思決定を行う難しさについて理解を深めることができた。
アクティビティ1:チェックイン
初めにチェックインとしてグループ内で自己紹介を行い、自身の専門分野や今日の気分、さらに「交渉で大切だと思うこと」について共有した。参加者によって、「信頼関係」、「情報」、「相手のニーズを考えること」など重視するポイントが異なっており、交渉に対する考え方の違いを知ることができた。またチェックインを通して、チーム内で意見を出しやすい雰囲気が形成されたと感じた。
アクティビティ2:貿易ゲーム
続いて、現代の国際社会の実態を反映させた「貿易ゲーム」を行った。参加者は2〜5人1組のグループに分かれ、それぞれが一つの「国」を担当した。各国には異なる資源や道具が配布され、参加者はそれらを活用しながら製品を作成し、世界銀行に売却することで利益を得るルールとなっており、他国との交渉や協力を通じて、「できるだけ大きな富を築く」ことを目指した。ゲーム内では、ファシリテーターが国連の役割を担い、状況に応じてルール変更や新たなルールの追加が行われたため、参加者は状況の変化に応じて、常に意識しながら行動する必要があった。ゲーム開始前は、参加者のほとんどが「これから何が始まるのだろう」という期待感を持っていた。しかしゲームが始まると、多くの参加者が状況把握に苦戦しており、ルールや市場状況を確認するために国連や情報が書いてあるホワイトボードの場所に集まった。また序盤では無謀な条件で交渉を行い、取引が成立しにくい様子がよく見られた。しかし後半になるにつれて、各国が徐々に自国の強みや市場の実態を理解し、戦略や役割分担にも変化が生じていた。
中でも特に印象的だったのは、各国の初期条件が違ったために、戦略や行動が大きく異なっていた点である。資源や道具が少なかったグループは、自国の強みと弱みを分析し、他国と積極的に協力することで状況を乗り越えようとしていた。一方で、資源あるいは道具が豊富な国は、その優位性を活かしながら交渉を有利に進めていた。また、ゲームが進むにつれて、資源や道具の需要が変化していったことも興味深かった。序盤では道具の価値が高かったが、後半になるにつれて資源の価値が増していき、同じものでも市場によって価値が変化することを理解することができた。さらに、このゲームでは競争だけではなく、「どのタイミングでどの国に交渉するか」といった人間関係や信頼構築も重要であった。特に、協力的な姿勢を早い段階から示したグループは、他国との関係構築に成功し、結果的に有利となっていた。この経験を通じて、現実社会における経済活動や国際関係においても、資源量や技術だけではなく、交渉力や信頼関係、状況変化への適応力が非常に重要であることを実感した。


アクティビティ3:結果発表と振り返り
ゲーム終了後には、各チームで最終的に集めたお金を集計し、結果発表を行った。その後、同じチーム内で「うまくいった点」、「交渉の中で良かったこと・嫌だったこと」、「次回行うならどのような戦略をとるか」について議論し、さらに別チームの参加者とも意見交換を行った。同じゲームであっても、各グループで戦略や価値観が大きく異なっていたことが印象的であった。
また参加者からは、「ゲームは非常に複雑で、現実の経済に近い」、「このゲームは情報収集や戦略性が重要である」という意見が多く出ていた。また、「それぞれの国がどの資源を持っているのか分からない状態では、適切な戦略を立てることが難しかった」という意見もあがった。そのため、「各国代表が集まって情報交換を行う会議のような場があれば、より高度な戦略や交渉ができて面白かったのではないか」という提案も出ていた。一方で、「現実世界では国ごとに強みの製品が異なり、それらで貿易している」、「製品以外に人件費にも価値がある」といった点は、実際との違いとしてあげられていた。
その後、ファシリテーターから「誰がこのゲームに参加しているかによって、ゲーム展開は大きく変化する」というコメントがあった。同じルールであっても、協調的に行動するチームもあれば、自国の利益を優先して積極的に交渉を進めるチームもあり、参加者の性格や価値観によってゲーム全体の雰囲気が大きく変わることが示されていた。また、「最初は資源が少なかったチームでも、他チームと協力関係を築くことで有利な立場になった」という点も共有され、信頼関係や協調性が重要であることが示唆されていた。このような振り返りを通じて、現代の経済活動では、情報収集力、交渉力、信頼関係、柔軟な戦略思考力など、多様な要素が重要であると学ぶことができた。

感想
本ワークショップを通じて、現代社会における経済活動や国際社会の複雑さを体感的に学ぶことができた。特に印象的だったのは、単に資源や道具を多く持っているだけでは有利とは限らず、情報収集や交渉、他国との信頼関係が非常に重要であった点である。ゲーム開始直後は、どのように行動すれば良いのか分からず、多くの参加者が混乱していたが、時間が経つにつれて各国が状況を分析し、それぞれ異なる戦略を取るようになっていった。この過程を通して、不確実な状況下で意思決定を行う難しさを実感した。また、ゲーム内では市場環境やルールが変化し続けたため、最初に立てた戦略をそのまま続けるだけでは通用しなかった。そのため、状況変化に応じて柔軟に行動を変える力の重要性を学ぶことができた。
さらに、他国との交渉においては、短期的な利益だけでなく、「今後も協力関係を築けるか」という視点が重要であり、信頼関係が結果的に大きな利益獲得につながる様子を観察した。この点は、現実の国際関係だけではなく、研究などにも通じる部分があると感じた。
そして振り返りでは、同じゲームでも参加者によって全く異なる展開になることが共有されており、人の性格や価値観が市場全体に大きな影響を与えることを実感した。私は普段研究活動を行う中で、実験やデータ解析など個人に意識が向きがちであるが、本ワークショップを通じて、多様な人と協力しながら状況を判断し、戦略的に行動する力の重要性を改めて認識した。
追記
私は今回、オブザーバーとして本講座に参加した。今回のワークショップでは、ゲーム形式を通して経済活動の仕組みや交渉を学ぶ構成となっていたため、参加者全員が非常に主体的に取り組んでいたことが印象的であった。単なる講義形式ではなく、自ら考え、行動し、他者と交渉する必要があったため、実践的に学ぶことができていたと感じた。本講座は、交渉力や協力の重要性を体験的に学びたい人にとって非常におすすめです!
報告者
生命理工学院生命理工学系D2、ToTAL第6期生 村尾侑大


