社会課題の認知 / プロフェッショナルと価値創造:「日本的ハードウェアスタートアップ行動術」を開催しました。

・科目分類: 社会課題の認知 / Recognition of Social Issues

・科目名: TAL.S403 プロフェッショナルと価値創造 I / Professionals & Value Creation I

・プログラム名: 日本的ハードウェアスタートアップ行動術 / How to work for Japanese startup globally

・ゲストスピーカー / Guest Speakers:

平田泰大 WHILL株式会社 ハードウェア開発本部 車両開発部 部長

Yoshihiro Hirata WHILL, Inc. Vehicle Development Gr. Director

・開催日時:19/July (Fri) 18:00-20:00

2019年7月19日(金)、本学大岡山キャンパスにて、WHILL株式会社の平田泰大さんをお招きし、「日本的ハードウェアスタートアップ行動術」というテーマについて話題提供頂くと共に、参加学生と質疑応答・ディスカッションを行いました。ToTAL登録生に加え、エンジニアリングデザインコースの齊藤先生と研究室の皆さんや一橋大学の学生含めた一般参加のOPEN参加学生を合わせて、35名が参加しました。すずかけ台からも何人かがリモートで参加しました。

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1.平田さんからの話題提供:

平田さんが所属されるWHILL株式会社(https://whill.jp/)は、日本、アメリカ、オランダに拠点を置くパーソナルモビリティ(車椅子)の生産・販売会社です。今回は同社部長である平田泰大さんをお招きし、スタートアップ、特にハードウェアスタートアップにおける働き方や、ユーザーとの向き合い方についてお話しいただきました。主に後半にて学生達からの質問にも答えていただきました。

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(1)WHILL株式会社の企業理念:

始めにWHILLの企業理念と会社の設立背景をお話いただきました。

「すべての人の移動を楽しくスマートにする」ということをミッションとし、デザイナーである創業者の一人が車椅子使用者からの要望を聞いたことから会社がスタートしたといいます。

車椅子使用者へのインタビューから、 ①段差や足場の悪さなどの物理的なバリアと、②世間からの病人を見るような視線や車椅子自体のデザイン性のなさという精神的なバリアの2つがあることがわかりました。そこからWHILLは、1)誰が見てもカッコイイと思えるようなデザイン性、2)どこでも行ける走破性を軸に考えて製品開発に取り組んでいるとのこと。走破性に関してはいくつかのモデルを開発して改善を重ね、アプリケーションやIOSリモコンの開発も行っています。走破性を高くするにも問題があり、ユーザーの自由な使い方に応えるために折り畳み式ではなく組み立て式に改良したという例や平田さんの生い立ちやWHILLとの出会いについて具体的にお話いただきました。

(2)スタートアップのコツ

WHILL、というよりは平田さんのポリシーは、一般的な企業とは違い、短時間で最初のプロトタイプを作り多くの失敗をすることだといいます。特に1・2回目の試作が最も大切で、平田さんは、なるべく早く1回目の試作を試し、2回目でユーザーに試してもらいます。たいていはここで挫折するそうで、現実を知る機会となるそうです。この1・2回目の試作の失敗にどれだけ短時間でたどり着けるかによって今後の自信のつき方が変わると教えてくださいました。

平田さんは試作品を作る際に、最近は日本と中国のリソースを使い分け、それぞれの長所を利用して進めているようです。日本は、図面の段階から、制作側からフィードバックをくれるコンサルタントのような役割も兼ねる、つまり作る前から一度試作を終えられるという大きな利点を持っているとのこと。結果的にとても品質の高い試作品が出来上がる一方、コストはアジア圏では高い方で速さは並み程度です。

一方中国は、品質は並み程度ですが、コストやスピードは格段に良いそうです。アリババにて検索をかければ業者も探すことも可能で、チャットでも注文が可能なので、ある程度妥協できるものであればお勧めとのこと。またコミュニケーションコストも低く、簡単な英語で、中には日本語で対応してくれることもあり、夜中でも見積もりを返してくれることもあるそうです。日本ではメールやファックスでしか受け付けない業者もありますので、この点は大きな利点といえます。

ときに、英語力はどの程度大切なのかという質問をよく受けるそうです。もちろんできることに越したことはありませんが、現在ではいろいろなツールが存在しているので恐れずに突破することを勧めるとのことでした。メンタル的な話になりますが、大切なのはやりきる覚悟で、目的を達成するためにはどうすればいいのかを考え続けることで道は拓けるそうです。本当に難しいときは専門の人に頼ったり、見方を変えていくなどをしていくことでモチベーションを維持することも重要だと教えてくださいました。

尚、WHILLでは、長期のインターンシップを受け付けているそうで、過去にも、本学から何人か受け入れています。今後も、興味ある学生がいたら積極的に対応してくれるそうです。

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(3)質疑応答

講義の最中にも活発な質問が飛び交い、新しいユーザーの満足度や要望の調査方法をディスカッションしたり、設計における最新ソフトの情報をシェアしたりなど、多くの議題に発展していきました。後半の約1時間ではスタートアップのスキルに関するものや、シェア・売上などの切り込んだ質問にもお答えいただきました。その上で市場の現状やユーザー・顧客の層、自動運転の課題などをディスカッションしていきました。

2.感想(筆者個人の所感)

私は博士課程進学を目指していますが、自身の専門領域だけを極めていれば良いとは考えておらず、チームワークや専門外での分野でも力を発揮できるような広い視野を持ったリーダーを志し、リーダーシップ教育院の門を叩きました。本講義も私の願望を十分に満たすような内容で、なるべく早く失敗をするというアプローチ方法は研究や実験を進めるうえで大変参考になりました。特に、メンタル面でのケアがスタートアップにかなり重要であるということがわかり、リーダーシップを十分に発揮するために、日頃から今回の方法を試してみようと感じました。

3.終わりに

今回はハードウェアスタートアップにおける働き方や知識を、座学ではなく双方向的な形式で学ぶことができました。本講義内容や学び方はリーダーシップの習得には欠かせない、大変重要なものであったと感じております。

お忙しい中貴重なお話をしてくださいました平田さんに厚く御礼を申し上げます。

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(文責:加藤日向、ToTAL2期生)