社会課題の認知/社会課題の認知ワークショップ II(第1回):「政策立案シミュレーション・ワークショップ」を開催しました。
・科目分類: 社会課題の認知
・科目名: TAL.S506 社会課題の認知ワークショップ II
・プログラム名: 政策シミュレーション・ワークショップ-産学連携の推進について〜日本の技術力を国富に繋げるために〜
・ファシリテーター: 経済産業省 大臣官房秘書課 課長補佐(採用担当)八木春香
・開催日時: 29/Nov (Fri) 17:00-21:00
2019年11月29日(金)、本学大岡山キャンパスにて、経済産業省との共同開催で、「産学連携の推進について〜日本の技術力を国府に繋げるために〜」というテーマで、新たな政策を立案してみるワークショップを開催しました。ワークショップのファシリテーションは、経済産業省 大臣官房秘書課 課長補佐 八木春香さんが行いました。
I.政策立案シミュレーション・ワークショップについて:
本ワークショップは、2012年、当時グローバルリーダー教育院(AGL)の道場menuの一つとしてスタートし、本年で、通算8回目となります。今年から、本教育院(ToTAL)の科目である「社会課題の認知ワークショップ II」のmenuの一つとして提供しています。もちろん、ToTAL/OPENプログラムの一つとして、ToTAL登録学生はもちろん、一般学生の参加も受け付けます。本教育院では、本学でもトップクラスの学生が身につける素養として、新たな価値を開拓し設定するための能力を「リーダーシップ」と考えており、それを構成する能力の中でも、俯瞰的視点は重要な要素の一つとして考えています。その俯瞰的視点及び多面的な視点を養う一環として「政策」をとりあげ、経済産業省のご協力を得て、本ワークショップを開催しています。
本ワークショップを通して、ToTALとして学生の皆さんに学んでもらいたい点は、下記3点です。
- 社会の問題点を、国の取るべき政策という、今後の方向性、ありうべき姿、予算等の多面的な視点で捉える練習を行う。
- 問題点の把握、問題点の本質を見極め論理的な展開で課題を設定する、独自の解決策を提示するとともにその実現の蓋然性を上げるための説得材料を構築する、というプロセスを理解する
- 分野を問わず、自身のネットワーク拡大を図る
尚、経済産業省では、入省を検討している大学生を含んだ学生に、「国家政策」への理解を深めてもらう目的で実施しているワークショップを展開しており、本ワークショップもその一環となっているため、当教育院と経済産業省との共同開催としています。これにより、他大学からの学生も多く参加しており、毎年、多様性があり、白熱した議論の展開が期待できます。
II. 参加者について:
定員以上の応募があったため選抜を行い、最終的には、ToTAL登録学生、ToTAL登録以外の本学学部生・大学院生、他大学学生含め合計で37名の学生が参加しました。参加学生の、出身大学、専攻別内訳は下記の通りです。
尚、男女比は、6:4です。言語は、日本語で行いますが、資料はすべて日本語・英語併記で準備しています。留学生は4名が参加しました。
<参加者出身大学別> <参加者学年別>
<参加者専攻別>
III. ワークショップについて:
参加者を6-7名で1チーム形成するように分けて、チームごとで政策立案をしてもらいました。チームは、性別、学年、専攻、出身大学が偏らないように配慮してメンバーを構成しました。
1. ワークショップの目的と取り組みのスタンスについて:
ファシリテーターの八木さんより、下記指摘がありました。
(1) チームで検討した結果に、正解も、不正解もありません。そもそも、絶対に間違いのない「政策」はありません。今、政府が取り組んでいることさえ、不十分だったり、間違っているかもしれません。
(2) 今回、取扱う事例は、実際に過去、経済産業省が直面したものですが、時、場所、条件が少しでも変われば、当然、結論も過去の実例と変わってもおかしくありません。
(3) だからこそ、是非、躊躇せず、小さくまとまらず、議論を尽くして、じっくり政策を考えてみてください。
グループワークの進め方についても説明がありました。
まず、「ありうべき未来」を共有しつつ、現状とのがgapから課題を特定し、そのgapを埋めるべく具体的施策を、企画立案、運用、評価、見直しのサイクルを回していくというものです(図1)。政策形成の3つのポイントとして、図2にある3点を挙げておられました。
<図1> <図2>
2. テーマ、ミッション、及びその背景:
(1) テーマ:産学連携の推進について〜日本の技術力を国富に繋げるために〜
(2) ミッション:優れた技術シーズでイノベーションを起こす」ための政策を策定する。大学には優秀な人材がいるがイノベーションに結びついてない現状を改善・打破する政策を立案する
(3) 背景:ファシリテーターより、政策検討のための基礎情報として、下記に関するデータ、情報、コメントが、学生に提示されました。
(4) イノベーションシステムの全体像と大学の位置づけ
(5) 大学の機能
(6) 大学の予算の現状
(7) 企業の大学への投資額を中心とした産学連携の現状
(8) 大学発ベンチャーの推移(IPOやM&Aの状況含む)
(9) 企業が外部提携をする際の考え方
3. 政策立案の過程:
上記1. の進め方に従って、各チームで(1)理想の姿、を共有し、(2)ありうべき未来と現実のgap及びニーズの構造的把握を行い、課題を設定し、(3)理想に近づくために「誰が」どのように変わるのか、を検討していきます。
検討の際に、関係するステークホルダーの意見を聴取しますが、ここでは、ファシテーターの八木さんと、お手伝いいただいた同省の山下さんが、ステークホルダーになり変わり、各チームからの質問に回答していきます。
4. 発表とフィードバック:
各チームから、新たな政策のアイデアを発表します。都度、学生からの質問やコメントが、活発に出されました。6チームの発表後、八木さんより、各チームに講評がありました。
IV. 全体を通して
- 異なる大学や専攻の学生がチームを形成して、1つのテーマで真剣に議論するという機会は貴重なので、参加された学生の皆さんは、楽しんでいただけたと思います。
- 4時間という限られた時間の中で、テーマの目的、背景を把握し、課題設定を行い、政策に落としていく作業は、なかなか大変だっと思います。各チームともテーマの本質を理解し、表面的な解決策に終わらせないようにしようとする姿勢は、評価できたと思います。各チームへの質問も活発に行われたことがそれを示していると思います。
- 時に、本来の目的から、何らの思惑により手段が目的化することはよくあることで、今回も、技術シーズをいかに効果的にイノベーションという製品や・サービスに結びつけていくのか、その中での大学の役割を議論していくのか、大学という研究教育機関の役割の話なのか、はたまた、大学の財源確保を目的とするのか、議論の中でブレがでてきたケースもあったのではないでしょうか。
- また、課題設定は、問題点や「こうしたい」とするニーズを構成するメカニズムを理解しないと「課題」にならないことも理解できたかと思います。これは、「デザイン思考」や「リーン・ローンパッド」でも同様なことが出てきます。その点は、政策を考えるときも、事業を考えるときも、そして社会事業を考えるときも共通しています。
- 最後に、このような貴重な機会を提供してくれた、経済産業省の八木さん、山下さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
(リーダーシップ教育院(ToTAL)特任教授 山田圭介)