ToTAL Program Report
5月26日に「デザイン思考2-Dayワークショップ@サッポロビール」第1日を開催しました。
Day-1 of “Design Thinking 2-Day Workshop@Sapporo Breweries” was held on 26/May.
・科目分類:リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/
Leadership, Followership and Consensus Building (LFCB)
・科目名:TAL.W.501-01 リーダーシップ・グループワーク基礎 S
・プログラム名:デザイン思考2-Dayワークショップ@サッポロビール
・ファシリテーター:中澤雄一郎氏(アイリーニ・マネジメント・スクール、旧デザイン思考研究所)
・開催日時:5月26日(日)11:00~16:30
2019年5月26日(日)、サッポロビール株式会社本社にてデザイン思考2daysワークショップ(1日目)が実施されました。講師として、アイリーニ・マネジメント・スクールCEO中澤雄一郎氏をお招きし、前半ではデザイン思考の基礎を学び、後半ではサッポロビールから提供されたテーマのもとワークショップを行いました。参加学生はToTAL所属生のみならず、東工大・一橋大の一般学生からも幅広い層の学生があわせて30名が参加し、活気あふれるものとなりました。
今回は、サッポロビールから、開催費用、会場、備品、飲物に加え、ワークショップ・テーマの提供をいただきました。
なお、本プログラムは2日間にわたって開催予定で、今回は1日目のワークショップとなります。次回2日目は6月8日(土)に開催予定です。
本記事の構成
1)本プログラムの目的
2)講義:デザイン思考とは何か?
3)ワークショップ:ワーク概要
4)まとめ
1)本プログラムの目的
デザイン思考の基礎を理解し、その方法論を実際の製品・サービスの開発に応用するプロセスを学ぶこと。
2)講義:デザイン思考とは何か?
結論から述べると、デザイン思考とはイノベーションのための方法論です。
デザインと聞くと色や形、模様を思い浮かべる人が多いと思いますが、本質的な意味ではそうした「形」ではなく、商品の「設計」を意味します。デザインが良い、悪いという評価は、ユーザーから見てその商品が使いやすいものであるか否かで決まります。ユーザーにとって使いやすい商品であれば「良いデザインだ」と評価されるのです。優秀なデザイナーは、こうしたユーザー目線を大切にすることで良い商品を生み出していきます。デザイン思考とは、そうした優秀なデザイナーの考え方や手法をビジネスの現場でも応用できるように体系化した、イノベーション開発のための方法論です。
なぜデザイン思考は最近になって注目されるようになったのでしょうか?
少し日本の歴史を振り返りながら考えてみましょう。日本では、バブル崩壊まで高い経済成長率が続いていたこともあり、「作れば売れる」時代がありました。そのため、どの企業も将来の売り上げについて予測を立てることが可能でした。しかし、時代が大きく変わり、現代はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)のような言葉が使われることに見られるように、不確実性の高い時代となりました。企業は、以前よりも将来の売り上げ予測を立てることが難しくなってきています。このような状況下において、企業が商品を売るためには、ユーザーのニーズを的確にとらえることが非常に重要になってきているのです。ユーザー目線を徹底するデザイン思考はそうした時代背景にマッチしており、だからこそ最近になって注目されるようになったと考えられています。
(図1)冒頭に行われた中澤氏による講義
3)ワークショップ:ワーク概要
テーマ:「ビール体験をデザインする」
今回のワークショップを全面協力いただいたサッポロビールより、上記テーマの提供がありました。実際に同社が検討課題としているテーマの一つが本ワークショップに提供され、より実践的なトレーニングとなりました。上記テーマの背景を、サッポロビール株式会社生産・技術開発部 パッケージング技術開発グループ 門奈哲也氏から説明いただきました。
ビール業界でも上記のような不確実性の高い時代背景の影響を受けており、それはビールの総出荷本数減少や第三のビールの普及といった現象に表れているようです。そうした背景を踏まえ、ワークショップではユーザー目線に立ってユーザーが求める新しいビール体験を提案する課題が課されました。ただし、所定の制約条件を加えた提案が求められました。ワークのプロセスはデザイン思考のフレームワークである「d.seed」(アイリーニ・マネジメント・スクール(旧デザイン思考研究所)のデザイン思考プレームワーク)のプロセスを踏襲しました。
本フレームワークは大きく5つのプロセスがあります。ワークショップ1日目にあたる今回は発見フェーズから実験フェーズの4フェーズを体験しました。
以下、各フェーズをワークの風景と合わせて振り返っていきたいと思います。
(図2)デザイン思考フレームワーク「d.seed」
(アイリーニ・マネジメント・スクール(旧デザイン思考研究所)より引用)
(A)発見フェーズ
発見フェーズは、ユーザーにインタビューを行い、ユーザーが現状に対して抱いている満足感や不満を抽出していきます。ここでは、ユーザーの立場に立って共感することが重要となります。そうすることにより、「なぜユーザーがそのように考えるのか?」というユーザーの価値観まで深く掘り下げることが可能になるからです。このフェーズでは、ユーザーの表面的な反応にとどまらず、こうしたユーザーすら気付いていないような無意識的な価値観を捉えることがポイントになります。
(図3)インタビュー風景
相手の価値観まで掘り下げるインタビューは難しいですね。
(B)詳細化フェーズ
詳細化フェーズでは、発見フェーズで得られた情報を整理し、ユーザーのニーズと課題を文字に起こし定義します。グループ内で各々が定義した課題を共有し、ディスカッションを通して、その中からアイデアが膨らみそうなもの1つを選びます。
(図4)ディスカッション風景
チームとして合意形成をするにあたり活発な議論が行われました。
(C)探索フェーズ
探索フェーズでは、まずブレインストーミングにより詳細化フェーズで決めたニーズと課題を解決できるようなアイデアを可能な限り出していきます。そのあとは各アイデアを「有用性」「実現性」「革新性」の3つの観点で評価します。評価が終わったあとは、「有用性」の評価が付いているアイデアだけを残し、最終的に1つのアイデアに絞り込んでいきます。「有用性」を最重視しているのは、デザイン思考の本質である「ユーザー目線を重視する」ということを受けているからです。
(図5)アイデア出しと評価の風景
本日のワークショップで一番の盛り上がりでした。
(D)実験フェーズ
実験フェーズでは、探索フェーズで決定したアイデアをもとにプロトタイプ(試作品)を作成します。商品開発をするうえで、プロトタイプをつくることは非常に重要です。概念を実際に形にしてみると、それまで想定していなかった課題がいくつも浮き彫りになってきます。こうした課題は、実際に商品を製造してしまったあとでは、直すことが難しくなってしまいます。
プロトタイプを作成したら実際にユーザーに体験してもらい、フィードバックをもらいます。そのフィードバックを受け、何度も改良を加え、商品の精度を上げていきます。
ここでのポイントは、早くシンプルに(極端にいうと雑でも構わない)仕上げることです。細かい部分にこだわってしまうと、そのプロトタイプに愛着が湧いてしまい、改良を加える妨げになってしまいます。
(図6)プロトタイプとフィードバックシート
(E)展開フェーズ
次回実施予定
4)まとめ
今回のワークショップでは、デザイン思考の基礎とデザイン思考が実際の商品開発にどのように活かされているのかを学ぶことができました。私がデザイン思考を初めて知ったときは「複雑な概念なのでは?」と考えていましたが、今回実際にワークを体験してみると、それが非常にわかりやすいプロセスに体系化されていたことに感心しました。また、デザイン思考の「ユーザーの視点に立つ」という姿勢は商品開発だけでなく、エンジニアの世界やビジネスの世界など、今後様々な場面で大切になってくるマインドだと感じました。このワークショップで身に付けたマインドを別の場面でも応用してみたいと思います。
最後に、今回のワークショップにご協力いただいた、サッポロビール株式会社の皆さんと、アイリーニ・マネジメント・スクールに心より感謝申し上げます。次回、6月8日のワークショップも楽しみにしております。
(図7)最後に全体で記念撮影
(文責:国分紘一郎 東工大M2・融合理工学系 OPEN参加)