2025年6月7日(土)、Effectuationワークショップを開催しました。ToTAL 7期生・鈴木大凱さん(生命理工学院生命理工学系生命理工学コース 修士2年)による報告です。

該当するアントレプレナーシップ科目TAL.W502-01  リーダーシップ・グループワーク基礎I
TAL.A501-01  修士リーダーシップ・グループワーク特論
TAL.A601-01  博士リーダーシップ・グループワーク特論
TAL.S505 社会課題の認知ワークショップA/C
ENT.L201 学士リーダーシップ・グループワーク基礎A
ENT.V203 学士価値創造グループワーク基礎C
ファシリテーター株式会社スケールアウト 飯野将人(共同代表)
上野潤一郎(COO)、絹川輝和(ユニゾンリーダー)
開催日時2025年6月7日(土)13:00-18:00
開催場所S4-202、南4号館2階、大岡山キャンパス

内容紹介

概要

Effectuationとは、ゴールから逆算して手段を設計するという典型的な方法(コーザル, Causation)とは逆の、手元のリソース・願望・過去の経験から、解決可能なゴールを設計する方法である。本方法は、個人の願望が根底にあり、課題を自身で定義するため、独創性が生まれやすいという点で注目されている。本ワークショップは、本方法によるアイデア創出と洗練を実際に体験するものである。

内容

  1. 願望の書き出し:
    Effectuationでは、願望や過去の経験を材料の1つとして目標設定を行う。そのため、好きなこと・嫌いなこと・やりたい事・やりたくない事について、素直かつ大量に考え、付箋に書き出した。
  2. 知識・スキルや人脈の書き出し:
    Effectuationでは、手元のリソースを考慮し、実現可能な目標設定を行う。そのため、自分が周囲よりも少しは得意なことや知っていること、および協力依頼が可能な人を思い出し、付箋に書き出した。
  3. 願望の共有と選定:
    本ワークショップでは、Effectuationに基づく目標設定・アイデア創出を5名のグループで行う。書き出した願望を持ち寄り、深掘りが可能であること・個性が出ており尖っていること・思い入れやこだわりが強いことなどを基準に、アイデア創出の原動力とする願望を選定した。
  4. 知識・スキルや人脈の紐付け:
    願望を成就させるためには、知識・スキルや人脈といったリソースが必要となる。グループ内で書き出したものを持ち寄り、選定した願望に使えそうなものを選定した。
  5. アイデアの考案:
    願望を実現するための取り組み・プロジェクトのアイデアを考案した。その際、リソースをどのように活用するかを記載し、プロジェクトによってどのように現実を変えるのかを漫画形式で視覚的に示した。
  6. 外部からの意見の取り入れ:
    願望の所有者がアイデアを発表し、それ以外のメンバーは他グループの発表を聞きに行に行った。フィードバックとして、発表者に追加で使えそうなリソースを書いた付箋を与え、アイデアの深化の余地について議論した。
  7. アイデアのブラッシュアップ:
      グループで、受け取った追加のリソースや意見を取捨選択し、アイデアを改良した。一部のグループにおいては、元々のアイデアのエッセンスを残しつつ、別のアイデアを組み上げた。
  8. Effectuationの解題:
    Effectuationによるプロジェクトの発案を感覚的に経験するため、Effectuation理論の解説は敢えてこのタイミングで行った。Effectuationを構成する原則についての解説を受けた。

ワークショップで学んだこと

・Effectuationの基礎的な流れを把握するだけでなく、各ステップでどのような準備・工夫・進行方法が役立つかについて、実体験に基づいて学ぶことができた。

・願望の書き出し」においては、「〜でありたい」「〜して過ごしていたい」のような抽象的な状態を表すものより、「〜したい」という具体的な行動を表すものが、プロジェクトの考案にあたって役立つことを認識した。

・上記「5. アイデアの考案」は一発で行うことは難しいが、リソースをカテゴリーごとに分類しておき、より包括的な高次のアイデアに統合していくアプローチが有用と認識した。

・上記「7. アイデアのブラッシュアップ」においては、フィードバックを受けて別のより良いアイデアを組み上げることは寧ろ推奨されると知った。既存のアイデアやフィードバックへの直接的な対応にとらわれず、要素を分解した後、ふと思いついた要素も含めて再構成することで、旧アイデアにおける課題を自然に解決できているより良いアイデアを創出できることを学んだ。

感想

  • 「Effectuation ↔︎ Causation」の対立軸は、レヴィ=ストロースの『野生の思考』における「ブリコラージュ ↔︎ エンジニアリング」の対比と類似しており、Effectuationはブリコラージュ的な考え方を実践する具体的な方法であると認識した。
  • 今あるものから収束思考的にアイデアを構築することは、自分に合っていると認識できた。逆に、Effectuationを実践するにあたって、ボトルネックになるのはリソースと外部からの意見の取り入れであると感じた。自己最適化された思考・理論・知識体系などはリソースとして考慮され難く、明白な専門・経験や、確立された公知の技術を身につけることと、多くの所属コミュニティを持つことがリソースの拡充につながると認識した。意見の取り入れについては、「最終的に自身が取捨選択するので今は意見を広く集める」という認識を持つことが解決策になると感じた。

報告者

生命理工学院生命理工学系M2、ToTAL第7期生 鈴木大凱