「研究者のためのストーリーテリング講座」ワークショップ(アントレプレナーシップ科目対象)を2026年4月26日に行った。

ファシリテーター遠藤賢生(株式会社CroMen)
開催日時2026年4月26日(日) 14:00–17:00
開催場所S4-202, 南4号館2階, 大岡山キャンパス

概要

本授業では、「研究内容を他者に伝える」をテーマに、他者から自身の研究について理解・共感を得、さらに協力を引き出すことを練習のゴールとして、ストーリーテリングの手法を実践しながら学んだ。研究活動の発信においては、単に自身の研究の情報を伝えるだけでなく、「誰に」「どのように」伝えるかが非常に重要である。本授業では、研究内容を分かりやすく言語化し、聞き手の理解・記憶・共感を促すことを目的として、講義・ワークシート記入・1on1対話を組み合わせた実践的なアクティビティが行われた。特に、「研究内容」「具体例」「なぜその研究を行うのか」という3点を軸に、自身の研究をストーリーとして構築し、他者にわかりやすく伝えることが重視された。

アクティビティ1:オープニングレクチャー

講義では、まず研究者にとってストーリーテリングがなぜ重要であるのかについて説明があった。研究活動は、国や研究機関、企業、さらには研究室のメンバーなど、多様な主体と関わりながら進めていく必要があり、その中で自分の研究を理解してもらい、共感を得て、協力を引き出す力が求められる。そのためには、単に事実やデータを正確に伝えるだけでは不十分であり、聞き手の記憶に残る形で分かりやすく説明することが重要である。
また、ストーリーとして語ることで、研究内容はより理解されやすくなり、記憶に残りやすくなるだけでなく、聞き手の共感を引き出し、行動を促すことにつながることが強調された。さらに、魅力的なストーリーを構成する要素として、誰に伝えるのかを明確にすること、内容をシンプルかつ本質的に伝えること、研究に取り組む動機や背景となる「なぜ」を語ること、そして聞き手の感情に訴えることの重要性が示された。

アクティビティ2:ワークシート記入

自身の研究について、「研究内容」「具体例」「なぜその研究をしたいか」を中心に言語化するワークを行った。特に、自身の専門分野とは異なる人にも伝わるように身近な例で説明することや、自分の研究の背景にある感情や動機を明確にすることが求められた。また、「なぜその研究をしたいか」を考える際に原体験シートを用いることで、過去の経験と感情を振り返り、自身の価値観や、研究へのモチベーションがどこから来るのかについて整理した。

アクティビティ3:グループワーク(記入したシート内容の共有)

グループ内で自己紹介および記入したワークシートの内容を共有した。他者と共有することで、自分では整理しきれていなかった部分や、説明が難しい点について新たな視点や気づきを得ることができた。また、他の参加者の話し方を観察することで、自身の伝え方の改善にもつながった。

アクティビティ4:1on1対話のレクチャーおよび実践

1on1対話の実践に先立ち、その目的とやり方についてのレクチャーが行われた。本アクティビティでは、単に研究内容を説明するのではなく、「相手を自分の研究プロジェクトに巻き込むこと」が目的として設定されており、聞き手にとって魅力的で共感を生む話し方が求められた。また、対話においては、配慮をしつつも遠慮はしないこと、フィードバックは相手からの贈り物として受け取ること、そして自己開示の深さが得られるフィードバックの質に直結することなど、対話を深めるためのコツについても説明があった。

その後、ペアを組み、話し手と聞き手を交代しながら、自身の研究をストーリーとして語る実践を行った。対話は自己紹介から始まり、ワークシートをもとにした研究内容を話し、その後の質問や深掘り、そして最後に振り返りを行うという流れで進行した。初回の対話では、聞き手からの質問やフィードバックを受ける中で、多くの人が、専門的な用語を使ったことによって、自身の説明した内容の一部が伝わりにくくなった点に気づいた。 続く2回目では、初回で得た気づきをもとにストーリーの構成や話し方を改善した上で再度対話を行った。その結果、専門用語を減らし、具体例をより明確にし、「なぜその研究をしたいか」の部分をわかりやすく伝えようと改めて意識したことで、聞き手の理解度や反応が向上する様子を実感することができた。この一連のプロセスを通じて、伝え方の工夫が相手の理解や共感に大きく影響することを理解するとともに、対話とフィードバックを繰り返すことでストーリーがより良いものへと改善されていく過程を実感した。

アクティビティ5:グループワーク(振り返り)

1on1対話を通じて得た気づきをグループ内で共有した。他者の改善した点や工夫した点を聞くことで、ストーリーテリングする上で自身に足りない点や、意識すべき重要な点について学ぶことができた。また、自分の中での学びを言語化して共有することで、理解をより深めることができた。

アクティビティ6:クロージング

全体で本日の学びや気づきを共有した。ストーリーテリングを通じて、研究をより魅力的に他者に伝えられるようになるためのポイントや重要性を改めて理解することができた。


感想

本講座を通じて、研究内容を「正確に伝えること」と「相手にわかりやすく伝えること」は大きく異なると強く実感した。これまで自分は、専門的に正しい説明をすることに重点を置いていたが、それだけでは相手の理解や共感を得ることは難しく、聞く相手がどのような人かを意識しながら話すことが重要であると気づいた。特に印象的だったのは、「なぜその研究を行うのか」という背景部分の重要性である。自分の原体験や感情を含めて語ることで、聞き手の反応が大きく変わることを1on1の中で実感した。また、同じ内容でも、伝え方や構成を少し変えるだけで、理解度や興味の持たれ方が大きく変わることにも気づいた。さらに、フィードバックを受ける中で、自分の改善点を認識し、聞き手視点で考えることの重要性を学んだ。今後は、研究発表や日常のコミュニケーションにおいても、「誰に伝えるのか」「どのようにすれば共感してもらえるのか」を意識し、ストーリーとして分かりやすく語ることを実践していきたいと考える。

追記

私は今回、オブザーバーとして本講座に参加したが、1on1対話を重ねる中で参加者の研究内容が分かりやすく改善されていく過程が非常に印象的であった。初めは専門用語が多く理解しづらかった内容が、対話とフィードバックを通じて興味を持たせるような内容へと変化した。本講座は、研究をより多くの人に分かりやすく伝え、巻き込みたいと考えている人にとって非常におすすめです!

報告者

生命理工学院生命理工学系D2、ToTAL第6期生 村尾侑大