ファシリテーター今井麻希子
(認定NVCトレーナー、コンサルタント/コーチ/ファシリテーター/執筆家、
システムコーチング認定コーチ(ORSCC)、Love Smart Cards マスター・ファシリテーター)
長田誠司
(リストラティヴ・サークルズ ジャパン 代表、紛争解決ファシリテーター、グラフィック・ハーベスター)
開催日時2026年1月9日(金)、1月16日(金) 17:00–20:00
開催場所[2026/1/9] S4-203, 南4号館2階, 大岡山キャンパス、[2026/1/16] S6-308, 南6号館3階

概要

本授業では、人との関係性をより良くするためのコミュニケーション手法である「非暴力コミュニケーション(NVC)」について学んだ。NVCは、対立や誤解が生じた際に、相手を批判したり責めたりするのではなく、自分と相手の双方の「感情」と「ニーズ」に焦点を当てることで、相互理解を実現することを目的とした手法である。私たちは日常生活の中で、無意識のうちに評価や判断、批判を含んだ言葉を用いてしまうことが多い。しかし、そのような表現は、対話や理解を困難にする要因となりうる。本授業では、こうしたコミュニケーションの構造を理解した上で、それに代わるアプローチとしてNVCの基本概念を学んだ。具体的には、「観察(Observation)」「感情(Feeling)」「ニーズ(Needs)」「リクエスト(Request)」という4つの要素を軸に、講義と実践を通じて理解を深めた。

1日目

アクティビティ1:アイスブレイク

まず初めにアイスブレイクとして、「あなたにとってリーダーシップとは?」や「コミュニケーションはなぜリーダーシップにとって重要か」をテーマに4人で議論を行った。その後、各グループで話し合った内容を全体で共有した。このアイスブレイクを通して、班の初対面の人と対話をすることに対しての抵抗感が軽減した。

アクティビティ2:NVCの基本概念

NVCと対比される「暴力的コミュニケーション」について説明があった。ここでは、相手を責める言い方や決めつけ、固定観念などが、対話を阻害する要因となることが示された。その上で、NVCについて「観察(Observation)」「感情(Feeling)」「ニーズ(Needs)」「リクエスト(Request)」という4つの基本要素があることを学んだ。「観察」とは評価や判断を交えずに事実をそのまま捉えることである。これを意識することで、相手を非難することなく状況を共有できると理解した。また、「感情」は思考とは区別されるべきものであることが説明された。具体的には、ある出来事に対して思考した時点で、内面で感じる純粋な感情とはいえなくなる。さらに「ニーズ」は、人が大切にしている価値や意味そのものであり、「リクエスト」は命令ではなく相手への提案や贈り物として表現されるべきものであると学んだ。これらの理解を通じて、人のあらゆる行動は何らかのニーズを満たそうとする試みであるという視点が重要であると認識した。

アクティビティ3:自己共感ワーク

次に、自分自身の内面に焦点を当てた自己共感ワークを行った。日常の出来事を振り返り、そのときに生じた感情と、その背後にあるニーズを言語化することで、その時の自分の状況を理解することを試みた。例えば、誰かに対してイライラしているときに「相手はあなたにどんなことを言ったか」、「どんな考えが浮かんだか」、「それを思い出した今どんな感情があるか」について考えた。その結果、「理解されたい」「尊重されたい」といったニーズが満たされていなかったことが分かり、事実をもとに感情の背後にあるニーズを考えることで、自分自身への理解がより深まると感じた。

アクティビティ4:共感リスニング

続いて、相手の内面を理解するための共感リスニングを行った。ここでは、自分の意見や解釈を交えず、相手の発言の背後にある感情やニーズを考えながら聴くことが求められた。ペアワークでは、一方が話し手、もう一方が聞き手となり、聞き手は評価を行うのではなく、相手のニーズに耳を傾け、「○○が大切なのでしょうか?」といったように、ニーズの推測を提供した。このプロセスを通じて、相手のニーズを推測する重要性を実感した。実際に、相手の話に対してすぐに解釈を加えることや、助言をすることを抑え、集中して聴くことで、相手が安心して話せる空間が生まれ、より深い対話が可能になることを目のあたりにした。また、感情やニーズを言語化することで、相手が共感してもらっていると感じることも印象的であった。このワークを通じて、共感的に聴くことは、相手の内面に関心を向ける姿勢そのものであり、信頼関係の構築において非常に効果的だと感じた。

アクティビティ5:NVCを用いた対話の実践

最後に、これまで学んだNVCの要素を用いて、対話の実践を行った。具体的には、対立や葛藤が生じた場面について、「観察」「感情」「ニーズ」「リクエスト」の4つの要素に基づいて、自分の考えを整理しながら相手に伝えた。そして話し終わった後、聞き手がプレゼンを聞いて、ポイントだと感じた点を伝えた。さらに話し手はそれを聞き、意図が受け取られているかをチェックした。このワークを通して、講義で学んだ通り、NVCでは共感が得られつつ、相互理解が深まるものだと感じた。

2日目

アクティビティ1:前回の振り返り

まずは4人グループで各自が、前回の授業で学んだことについて共有し、振り返りを行った。「あらゆる行動はニーズを満たそうとする試みである」ことを改めて認識した。

アクティビティ2:リクエストについての講義

次に、NVCにおける「リクエスト」とは何かについて、「強要」との違いに触れながら説明があった。例えば、NVCにおけるリクエストとは、相手に何かをしてもらうことを求める際に、相手が「NO」を伝えてくれたことを尊重できることであると説明された。一方で、相手が断った際に責められたり、不機嫌な態度を取られたりする場合、それは実質的には「強要」になってしまうことを学んだ。このように、リクエストは双方のニーズを大切にし、強要は自分のニーズだけを大切にするものであることを学んだ。この講義を通して、自分自身も普段のコミュニケーションの中で、相手にリクエストしているつもりが、無意識のうちに強要している可能性があることに気づいた。そしてNVCでは、自分のニーズを伝えるだけでなく、相手の自由や選択を尊重することが重要であると学んだ。また、相手に従ってもらうことを目的とするのではなく、お互いのニーズを理解しながらつながりを築くことが、より良い対話につながると学んだ。

アクティビティ3:観察についての講義

続いて、NVCにおける「観察」と「解釈」の違いについて説明があった。NVCでは、出来事を伝える際に、自分の評価や決めつけを含めず、事実をそのまま表現する「観察」が重要であると学んだ。一方で、「いつも批判ばかりしている」「○○な人だよね」といった表現は、自分の考えや評価が含まれた「解釈」の混ざった表現であることが説明された。この講義を通して、私たちは日常の中で、無意識のうちに解釈や決めつけを含めて話してしまうことが多いことにも気づいた。そのため、まずは事実をそのまま観察する姿勢を持つことで、互いの理解につながると感じた。

アクティビティ4:カードを用いた共感リスニング

続いて、感情やニーズが書かれたカードを用いながら、共感リスニングを行った。このワークでは、対立や不満を抱えている場面について、相手の発言の背景にある感情やニーズを理解することを目的とした。また、ワークの中では、「観察」と「解釈」を区別して整理する練習も行った。例えば、「妹が映画に行けないと言った」という事実は観察である一方、「自分勝手だ」という表現は解釈であることを確認した。このように、事実と評価を分けることで、相手を責めるのではなく、自分の感情やニーズを意識しやすくなると感じた。さらに、満たされたニーズに焦点を当てたフィードバックも行った。具体的には、「あなたが○○してくれたとき、私は嬉しかった。それは私の○○というニーズが満たされたからです。ありがとう。」という形式で、自分の感情とニーズを言語化した。これにより、単に「ありがとう」と伝えるだけでなく、自分がなぜ感謝しているのかを具体的に言語化し、共有することの意義を学んだ。このワークを通して、対立的な状況でも背景にある感情やニーズに目を向けることで、相互理解につながる可能性があることを実感した。また、共感的に聴くことで、相手だけでなく自分自身の内面についても理解が深まることを実感した。

アクティビティ5:チェックアウト

授業の最後に、チェックアウトとして、この2日間の授業を通して学んだことや印象に残ったことについて、2人1組になって共有を行った。その後、各ペアで話した内容をクラス全体でも共有した。共有の中では、「相手の行動の背景には必ず何らかのニーズが存在している」という考え方が印象に残ったという意見が多数あった。また私自身もそうであったが、「観察」と「解釈」を分けることの難しさや、普段の会話で無意識に評価や決めつけを行っていたことに気づいたという意見も多かった。

感想

本授業を通じて、コミュニケーションに対する認識が大きく変化した。これまで私は、問題が生じた際に、言動自体に意味があると考えていた。しかしNVCの視点では、その背後にあるニーズに目を向けることが重要であると学んだ。また、相手の話を評価せずに聴くことの難しさと重要性も実感した。今後は、研究活動や協働活動においても、相手のニーズを意識しながら対話を行っていきたいと考えている。

追記

今回のワークショップでは、参加者同士が自分の経験や感情を楽しそうに共有していたことが印象的であった。特にペアワークやグループワークにおいては、互いに共感的に理解しようとする姿勢が見られ、NVCの重要性を改めて認識した。対人関係や対話に課題を感じている人や、コミュニケーションをより良いものにしたいと考えている人にとって、本ワークショップは非常に有益であると感じた。

報告者

生命理工学院生命理工学系D2、ToTAL第6期生 村尾侑大