2026年7月1日、「プロフェッショナルと価値創造 A」第5回を、ゲストスピーカーとして境亮祐氏(Mitsubishi Heavy Industries America, Inc.、SVP, Investment & Business Development)をお招きし、開催しました。

該当するアントレプレナーシップ科目ENT.V501/503 修士プロフェッショナルと価値創造A/C
ENT.V603/605 博士プロフェッショナルと価値創造A/C
TAL.S502/507 プロフェッショナルと価値創造 A/C
ゲストスピーカーRyosuke “Ricky” Sakai(境 亮祐), Senior Vice President, Investment and Business Development, Mitsubishi Heavy Industries America, Inc.
開催日時2026年7月1日(水)18:00-20:00
開催場所大岡山キャンパス 南4号館 S4-201

概要

アントレプレナーシップ(リーダーシップ、価値創造)科目である「(修士/博士)プロフェッショナルと価値創造 A」第5回を、対面形式で開催しました。今回は、ゲストスピーカとして、米国三菱重工業会社でSenior Vice Presidentの境亮祐氏をお招きし、日本とアメリカの構造的相違点に触れながら、ディープテックがなぜアメリカで起こりやすいのか、ディープテックにおける課題は何か、さらには、実際にディープテックのようなイノベーションを社会に実装し普及させるための「事業開発」とは何か、米国三菱重工業会社での事業開発について語っていただきました。

内容

日本とアメリカの違い

講演では、日本とアメリカの社会・経済システムにおける根本的な違いについて以下の点を説明していただきました。
● 政治・行政の性質
 ・日本は官僚機構主導により政策・事業が長期的に継続される傾向がある一方、アメリカは大統領交代に伴い政策が抜本的に転換される「変革型」の政治システムである。
● 市場とポテンシャル
 ・GDP、政府予算、国防予算の規模において、米国は日本の16倍以上の規模を持つ。人口動態においても、米国は移民政策により成長を維持している。
● イノベーション・エコシステム
 ・米国は豊富な資源やインフラ(データセンター、発電所等)、世界中から集まる優秀な人材、強力な投資家層、そして英語という共通言語の利点を背景に、世界最高水準のイノベーション・エコシステムを構築している。特に、テキサス州のような成長地域を中心に、クリーンテックからクライメートテックへと進化する産業の潮流が加速している。

ディープテックについて

「ディープテック」とは、ブレークスルーを伴う技術のことであり、次のような構造的課題を持っていると説明していただきました。

●技術的リスクと初期投資
 ・実証フェーズの長期化と膨大な初期投資が必要であり、実現可能性の不確実性が高い。すなわち、長期的に資金調達するのが難しい。
●資金調達の障壁(死の谷)
 ・ベンチャーキャピタルによる出資終了後から商用化に至るまでの期間、資金供給が途絶える「死の谷」をいかに乗り越えるかが課題である。

このようなディープテックの課題の特徴と、日本とアメリカの違いを考慮すると、アメリカと比べると日本ではディープテックが育ちにくいことが日本の課題と言えます(境氏はあくまでアメリカがこの点で際立っていて、日本でディープテックが育ちにくいわけではないと言及しました)。

開発事業と米国三菱重工業での開発事業例

ディープテックはじめ、イノベーションを生み出すことを目標として、境氏は「事業開発」の重要性と実際に米国三菱重工業で行われている事業開発について説明していただきました。

● 事業開発とは
 ・パートナーシップや関係構築を通じて、事業を大きく育てる。
 ・実際にイノベーションを実現し、普及させるための活動。そのためにできること全てが含まれると、境氏は説明する。
● Bankabilityとは
 ・銀行が融資できるほどの信頼性のこと。
 ・スタートアップはまだ事業実績が無い分銀行がお金を融資できるほどの信頼性を持たず、その点で資金調達が難しい。
 ・Bankabilityを持つ企業がスタートアップと共同で開発し、銀行に対しても口添えすれば、融資を受けることができる。三菱重工業のような大企業は、Bankabilityという強みを持つ。
● 米国三菱重工業での事業開発例(投資や周辺技術に協力)
 ・Advanced Clean Energy Storage (ACES) Project (ユタ州):
  カリフォルニア州での水素ガスタービンを動かすための水素貯蔵システムをユタ州に構築!
 ・CO2と水素から合成燃料(e-fuel)を製造:
  化石燃料から生まれるCO2と風力などのクリーンエナジーから電気分解で得られる水素を使って、e-fuelという合成燃料をつくり、化石燃料から排出されるCO2を減らそうとする取り組み!
 ・FERVOの強化地熱発電:
  多くの大企業より投資を受けているFERVOの地熱発電所を各地につくり現代のデータセンター需要に伴う電力供給を目指す!

最後に

本格的にアメリカのスタートアップ事情を聴いたのは今回が初めてでした。日本を支える若手として、正直大きな劣りを感じました。自分たちが何気なく大学に通っている中で、アメリカの若者たちの多くは起業に本気になっているんだと知って、自身に恥じる部分があったからです。

今回の講演では本当にたくさんのことを学ばせていただきましたが、根本的に一番の気づきは、自分が世界が進んでいるスピードを大きく誤解していたことです。少し前までは、自分自身ある程度のデータサイエンススキルがあれば、食い扶持に困らないだろうという思いまでありましたが、むしろ今ではそういうスキルとかがあってもいくらでも社会から蹴落とされる感覚になっています。考えを改め、自分自身でよく考えて、できることをどんどんやっていこうと強く思えるようになりました。境さん、この会をセッティングしてくれた皆さん、本当にありがとうございました!自分の人生、もっと全力で頑張ろうと思います。

報告者

工学院情報通信コース、M1、鹿田塁