2026年7月22日、「プロフェッショナルと価値創造 A」第7回を、ゲストスピーカーとして増田雅史氏(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士)をお招きし、開催しました。

該当するアントレプレナーシップ科目ENT.V501/503 修士プロフェッショナルと価値創造A/C
ENT.V603/605 博士プロフェッショナルと価値創造A/C
TAL.S502/507 プロフェッショナルと価値創造 A/C
ゲストスピーカー森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士 増田雅史氏
開催日時2026年7月22日(水)18:00-20:00
開催場所大岡山キャンパス 南4号館 S4-201

概要

アントレプレナーシップ科目(ToTAL科目)「プロフェッショナルと価値創造A」第7回を対面形式で開催しました。今回は、森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士(日本・ニューヨーク州弁護士)であり、立教大学大学院人工知能科学研究科客員教授も務める増田雅史氏をゲストスピーカーとしてお招きしました。講演では、理系から法曹界へ転身した自身のキャリアを振り返りながら、変化の激しい時代におけるキャリア形成の考え方や、AI・デジタル社会で求められる人材像についてお話しいただきました。

内容

● 増田氏は、大学では工学を学び、技術とビジネスを融合した分野を専攻しました。当時は、理系学生がそのまま技術職へ進むことが一般的でしたが、「学んできたことの延長線上だけで将来を決めてよいのだろうか」と考え、以前から興味を持っていた法律の道へ進むことを決意します。一念発起してロースクールへ進学し、弁護士となりました。
● 弁護士としては、IT法務や金融庁への出向、海外での勤務など幅広い経験を積み重ね、現在はデジタル政策やAIガバナンス、テクノロジー法務の第一線で活躍しています。また、大学での教育活動や政策提言、企業経営への参画など、多方面で活躍されています。
● 講演では、キャリア形成において重要な考え方として、「掛け算」「打席に立つ」「Connecting the Dots」の3つのキーワードが紹介されました。
● 「立場や経験の掛け合わせが、自分だけの希少性を生む。」一つの専門性だけではなく、異なる分野での経験を組み合わせることで、自分にしかない価値が生まれると説明されました。
● また、「チャンスが来るかどうかは分からない。しかし、打席に立っていなければ打つことはできない」と述べ、責任の大きな仕事にも積極的に挑戦してきた自身の経験を紹介されました。
● さらに、Steve Jobsがスタンフォード大学2005年卒業式スピーチの中で紹介した「Connecting the Dots」の考え方を引用し、「今は点にしか見えない経験も、後から振り返ると別の経験とつながるはずだ」と学生へメッセージを送りました。将来を予測することはできないからこそ、学生のうちに多くの挑戦を重ね、経験という「種まき」を続けることの重要性を語られました。
● 講演後半では、Society 5.0やAIの急速な発展にも触れられました。AIによって仕事の在り方は大きく変化する一方で、人間には責任ある意思決定やコミュニケーション能力、異なる専門分野を結び付ける力がますます求められると説明されました。
● また、学生へ向けて「専門性を磨く」「隣接領域へ積極的に飛び込む」「情報発信を続ける」「頼まれたことを喜んで引き受ける」という4つの行動指針も紹介され、スタンフォード大学d.schoolが掲げる標語「The only way to do it is to DO IT.」(何かをやるための方法はただひとつ、「やる」ことだ)を紹介し、まず行動を起こすことの大切さを強調されました。

参加学生との対話

講演後には、「理系出身で良かったこと」「専門外へ挑戦する原動力」「AI時代に弁護士の仕事はどう変わるのか」など、多くの質問が寄せられました。

● 増田氏は、理系出身であることがテクノロジー企業との共通言語となり、自身ならではの強みになっていることを紹介しました。また、専門外への挑戦を支えているのは「純粋な好奇心」であると語り、AIについては、情報整理や契約書作成などの業務はAIに代替される一方で、人を説得し、信頼関係を築く仕事は今後も人間に求められるとの考えを示しました。
● さらに、「失敗した経験をどのように捉えているか」という質問には、「その時点では失敗に思えても、後になって別の経験とつながることがある。本当に失敗だったかどうかは、その瞬間には分からない」と回答され、講演全体を象徴するメッセージとなりました。


最後に:「点は、いつか線になる

理系から法曹界へ進み、さらにAI・デジタル政策、教育、産学官連携へと活躍の場を広げてきた増田氏の実体験を通して、キャリア形成に必要な考え方を学ぶことができました。
「掛け算」「打席に立つ」「Connecting the Dots」という3つのキーワードは、将来に迷う学生にとって大きな示唆となる内容でした。
「今は一つひとつの経験が『点』に見えても、挑戦を続けることで将来それらが『線』となり、自分だけのキャリアを形づくる」
その力強いメッセージが、参加した学生一人ひとりの背中を押す講演となりました。

報告者

環境・社会理工学院、社会・人間科学コース、M2、 知野恵