【イベント報告】12月1日(日)、アショカジャパン主催、リーダーシップ教育院が協力する学生向けイベントとして、アショカ・フェロー(*)のハシナ・カービ氏による講演「Shared Leadership as Strategy」が大岡山キャンパス西9号館716号室で行われました。

高校の部活として始めた取り組みをさらに進め、30年の間に、人身取引に対抗する官民情報共有プラットフォームを完成させたカービ氏は、これまでの活動を自身のライフストーリーと共に語り、聴講した高校生や、東工大生らの質問に率直に答えてくれました。

>行方不明の子どもたちに関する正確かつリアルタイムの情報を記録するソフトウェア「ICMC」を核とする官民協働プラットフォームの完成まで

カービ氏はインド メガラヤ州の出身です。高校生のころに地域の女性エンパワーメントのために始めた活動を続け、女性たちの作る工芸品の市場開拓、製品の品質向上に取り組みました。しかし、政府の環境政策の影響で材料が入手できなくなると、収入減少により、多くの家庭が子供を労働力として遠隔地に送らざるを得なくなります。カービ氏らが材料不足の問題を解消するために動く中、他の州に送られた子供達が行方不明になるという新たな問題が発生します。カービ氏は、このような行方不明者が人身売買の標的となることを知り、警察、メディア、ソーシャルワーカーと連携して救出と保護に乗り出します。Email と ファイルで情報共有を始め、後にインド工科大学と共同で管理ソフトウェアを開発し、近隣4ヵ国の警察が情報を共有できる「Impulse Case Management Centre (ICMC)」が構築されました。ICMCを核としたパートナーシップにより、約72,000人の子供を救出しました。さらに、人身取引の状況を打破する鍵となる警官やジャーナリストの訓練プログラムも開発し、約3万人を訓練してきました。

>直観に従って行動し、振り返って分析することにより発信力がついた

カービ氏は、大学進学への迷いや、活動に対する深刻な妨害など、後戻りのできない選択の場面で、何度も「自分にとって何が本当に重要なのか」と問いかけ、大胆な選択をしてきました。その決意のもとに実行してきたことが認められ、2006 年にはアショカのようなグローバル組織のサポートや、フルブライト奨学金による留学の機会を得ます。その中で、それまで直観に従って進めてきた活動を振り返って分析する力を身に付け、さらに強い発信力をもつことになりました。そして、2013-2014 年にはICMCの完成を見、さらに炭鉱での児童労働という新たな問題の解決を実現していきます。身近にある問題をきっかけに、数万人規模に影響を与える社会変革を起こすに至ったのです。

>シェアードリーダーシップは困難だけれどシステムを変える有効な形である

彼女の行ってきた活動は、長い時間をかけて、様々なステークホルダーの中に志を共有する「チェンジメーカー」を探し、その結束の中心となることによって、シェアードリーダーシップを形にしたものだと、カービ氏は言います。そのために重要なのは、表面的な繋がりではなく、深いパートナーシップを築くことです。辛抱強く話しあって志を共有すること、常に情報を共有し、対等に貢献を認め合い、それぞれのステークホルダーの目標達成を支援すること(ownership の重視)、人間性の尊重に基づくコミュニケーションをすることが大事だと話してくれました。

>学生へのメッセージ

カービ氏は最後に聴衆に向けて、自分自身の力を認識し、内なる声に耳を傾け、行動してほしいとメッセージを送りました。

(*)「社会で起きている問題を応急処置的に対処するのではなく、その問題自体を生み出している根本の部分にアプローチし本質的な解決に取り組む人」(アショカ・ジャパンウェブサイトより)。これまでに93ヵ国から約3700人がアショカによって認定され、アクセラレーションのための支援を受けています。

https://www.brand-pledge.jp/associate/ashoka-japan/vision

■ハシナ・カービ氏の活動について:
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