・科目分類: リーダーシップ・フォロワーシップ養成、合意形成
・科目名: リーダーシップ・グループワーク基礎 I/II<S>
・プログラム名: システムxデザイン思考1-dayワークショップ/1-day System×Design Thinking Workshop
・ファシリテーター: 飯盛 豊(デジタルサーフ株式会社 代表取締役)
・開催日時: 2021年7月10日(土)10:00~18:00
・開催場所: 大岡山キャンパス 南4号館S422

2021年7月10日に1-day System×Design Thinking Workshopを、本学大岡山キャンパスで開催しました。当日は、新型感染症対策への配慮を十分に行ったうえで、対面で行ないました。参加者は、東工大のToTAL生、OPEN参加の学生に加えて、一橋大学からも2名の学生が参加し、全部で21名が参加しました。今回ファシリテーターを努めて下さった方は、飯盛 豊(デジタルサーフ株式会社 代表取締役)さんでした。飯盛さんは、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)で社会人としてマスターを修了されています。

1. システム×デザイン思考 / System×Design Thinking:

システム×デザイン思考とは、慶応義塾大学 大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)で誕生した、「システムズエンジニアリング」を基盤とし、システム思考とデザイン思考を掛け合わせた新たな課題解決手法として知られています。人間中心の問題を解決するデザイン思考は、「不確 実性が高く」「問題が複雑でデーターが無い」もはやこれまでのやり方では、もはや解決できない問題を創造的なアプローチで解決するマインドセットです。

システム×デザイン思考は、多様な人が集まり、システム思考とデザイン思考のノウハウが融合されることで、イノベーションがどのように生まれるかをメソッド化しています。システム思考は、見えている世界の「出来事」「現象」だけに目を向けるのではなく、それを引き起こしている見えていない世界の、全体の構造、関連性、相互依存性を論理的/分析的にアプローチしその動きを捉えるマインドセットです。この相反する思考を掛け合わせイノベイティブなアプローチが誕生します。

実は、私もSDMにご縁があって、システム×デザイン思考を体験するワークショップに過去に参加したことがありました。ちょうど、ToTAL教授 山田圭介先生からワークショップの案内をご紹介いただいたことがきっかけで、慶應SDMのある日吉キャンパスまで行って、どきどきわくわくしながら参加したのを覚えています。それ以来、M1の時に2日間、M2の時に1日、D1の時に4日間合計で参加したと思います。慶應SDMの先生方やそのときのワークショップでTAをして下さった学生の方々には本当にお世話になったと思います。Webサイトで公開ワークショップの案内や、研究内容の閲覧が可能です。気になった方は覘いてみてください。

(慶應義塾大学 大学院 システムマネジメント研究科、http://www.sdm.keio.ac.jp/)

2. スーパーフード「昆虫食スーパー」をシステム x デザイン思考で考える

ここからは、本ワークショップで扱ったテーマおよび内容を紹介します。

〜昆虫食の販売が都市部スーパーで普通になる日が来る〜

イナゴや蜂の子と言った昆虫は、長野県を始めとする日本の山間部では川魚に匹敵する貴重なタンパク源として、長い歴史がある。昆虫は昔から人間が食べてきた伝統食であると同時に、タンパク質が豊富な健康食品であり、従来の家畜に比べて飼料効率がよく環境負 荷の少ない食品としても見直されている。現在、国連食糧農業機関(FAO)が今後起こると予想されている世界の食料危機の問題を解決する昆虫食に注目をしている。数年後には昆虫を食べる事が当たり前になる日がきっと訪れるだろう。そんな未来の「昆虫食スーパー」をシステム×デザイン思考で考えよう!

今回は、下記(i), (ii), (iii)の問題定義アプローチを通してワークを行ってアイディアを出していきました。その際の問の立て方のプロセスとして、①解くべき問題を探索する→②インサイトを見つける→③問を立てるの3ステップがあります。

特に、私も慶應SDMのワークショップに何度も参加してみて、「インサイト」を見つけるということが、ワークの中で良いアイディアをダイレクトに出すことよりも重要であると感じていました。ある程度具体的な内容で合った方が、チーム内の認識が一致しやすいので議論が弾みます。過去の経験で出たインサイトを活かして、単語よりも具体的な文章でインサイトを共有する様にグループワークの際に心掛けていました。

それぞれのアプローチで、最後にインサイトから問題定義をする際は、「Hoe might we…? / どうしたら〇〇を●●できるようになるか?」構文を用いて実践して行きました。

(i) 当たり前を疑ってみる

  昆虫の常識について、当たり前だと思っていることをブレインストーミングというアイディア連想法を用いてリストアップして、インサイトを見つけていきました。

(ii) 今あるものから疑ってみる

  昼食をはさんで、今あるスーパーの「ものこと」をリストアップするブレインストーミング(Google等で検索しても可)のワークを行っていきました。その後に、2軸図に配置してみて、様々な軸で何度も繰り返しながらインサイトを見つけ、問題定義をして行きました。この軸を最初に決めることで苦労したのですが、軸の設定がイノベーティブなほど、これまでの常識に囚われないインサイトを出すことができたと感じました。

(iii) 上位の目的から考えてみる

  最後のアプローチでは、上位の⽬的を考え、思考する空間を広げてみて、今までとは違った問題定義の切り⼝を⾒つけていきました。手順は、Value Graphの上位を作成し、インサイトを見つけて、問題定義をするといった3ステップで行われました。

私がこれまでに参加した慶應SDMのワークショップでも毎回Value Graphを作成してきましたが、具体化・抽象化の程度が難しいと感じていました。講師の飯盛さんに質問を行ったところ、まずは手を動かしてやってみることが大事!だというアドバイスをいただくことが出来ました。

以前、Value Graphのワークの目的が明確に整理できず、慶應SDMの先生に質問をした所、大変丁寧に教えていただいたことがありました。その時の学びを元に、アッパーバリューグラフは、そのものの目的を考えて、思考の幅を広げていく手法なので、ある答えを求めるというよりも、あるお題に対しての思考の幅を広げていくことで、お題に対するアプローチの幅を広げるという意識で行いました。

(iv) 問の決定

作成した問いからチームで取り組むべき問いを決定して行きました。選ぶ際のポイントは以下の通りです。

・ 今まで聞いた事がない誰も考えた事がない普通ではないものを選ぶ
・聞いた事がない重要で且つ⾯⽩いチームでこれをやりたいと思えるもの
・抽象度が⾼い問題や具体を選ばない抽象度は真ん中を選ぶ

(v) CVCAの作成

まず、サービスや製品に関係する全てのステークホルダーを顧客として洗い出します。次にステークホルダー間のお⾦(!)や製品情報(!!)のやり取りを整理することで、どのような価値が、誰に提供されるのかを⾒える化し分析する事により、設計意図との相互の「ギャップ」を把握します。

このCVCAの作成図を用いて、最終発表を行いました。どのチームもこれまでのスーパーの常識に囚われることなく「見たことも聞いたこともないアイディア」が発表されていました。

3. 編集後記

久しぶりに対面のワークショップに参加して、久しぶりに会ったToTALの同期や後輩たちとも再開でき、グループワークも楽しく実践し捗ることができたので良かったです。対面のワークショップはいいなぁと改めて感じました。

最後に、一日に渡って、本ワークショップのファシリテーションをして下さった、飯盛豊さんに心より感謝申し上げます。

(文責:物質理工学院 応用化学系 原子核工学コース、ToTAL 1期生博士後期課程2年生 篠田泰成)