2021年、七夕の7月7日 (水曜日) 18:00-20:30、本学大岡山キャンパスにて「リーダーシップ探求ブックダイアローグ(日本語)」第3回が開催されました。

参加者は、ToTAL(リーダーシップ教育院)とInfoSynergy(エネルギー・情報卓越大学院)、一橋大学などの参加者を含むOpen生、ToTAL特任准教授の嘉村賢洲 先生、松崎由理 先生を合わせて計11名でした。学部から博士課程までの幅広い学生が参加しました。

新型コロナウイルスの状況下という事もあり、オフラインとオンラインのハイブリッド形式で運営を行いました。講義室に集まった対面のメンバーは、マスク着用、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスの確保などに準ずる必要な対策を徹底しました。オンライン参加者もいたため、ZOOM接続やGoogleスライドを通して会場と双方向のやり取りを実現可能にしました。ファシリテータは、ToTAL 1期生の篠田が担当することになりました。

本読書会では、毎回 ①リーダーシップの開発に役立つ、②未来社会への洞察力を高める本を題材に、ワークショップ形式で勉強会を開催しています。「アクティブ・ブック・ダイアローグ」と呼ばれるユニークな読書会手法、短時間で密度の高い読書と参加者同士の深いディスカッションを実現しています。

Students will read books on ① leadership development or ② insights on future society following a unique book club style called “Active Book Dialogue (ABD)”. In these classes students can grasp main idea of the book quickly and discuss ideas with other students intensively. It can be a language training for students who would like to improve Japanese / English skills. If translation is available, we will prepare it to help you get the meaning correctly.

(i) アクティブ•ブック•ダイアローグ(ABD)

 「リーダーシップ探求ブックダイアローグ」の読書会で実践されている手法は、ABDと呼ばれているものです。ここからは、「ABDマニュアル」から少し抜粋して概要を説明しようと思います。アクティブ・ブック・ダイアローグでは、(1)オープニング、(2)メイン、(3)エンディングというように流れが進んでいきます。

 (1)オープニングは、(1-1)チェックイン、(1-2)オリエンテーションの2つのパートから構成されています。今回は、篠田がファシリテータを努めたので、(1-2)オリエンテーションを担当することになりました。そこで、私は「文字を少なく、図を多く」と説明をしてしまいましたが、嘉村先生から補足が加わりました。図を積極的に用いるのは良いですが、主観が入ったり、それぞれが異なる解釈を生んでしまったりするような図はなるべく避け、内容の構造化を目的として行う必要性が感じられました。

 (2)メインのパートでは、3つのプログラムが進行し、それぞれ個性的で魅力的なプログラムになっています。具体的には(2-1)サマライズ、(2-2)リレー・プレゼン、(2-3)ダイアローグです。(2-1)では、担当パートごとに本をアサインして読み、B5用紙6枚でサマリーを作成します。今回はオンライン参加者も考慮して、Googleスライドを使用して6スライドのサマリーを作成していただきました。(2-2)では、各参加者が自らのパートを3分で説明します。最後に(2-3)では、感想や疑問について話して深め合う場を持ちます。

 (3)エンディングでは、主に(3-1)チェックアウトをして、解散という流れになります。東工大リーダーシップ教育院で行うABDでは、読書会が終了しても1時間、2時間は夜遅くまでディスカッションが続くことが多く有ります。

特に、ABDのメリットは、事前準備の必要がない点、全員がその場で読むプロセスを行うため、読書会内での貢献度の差が起こらない点、参加者が作成したレジュメが記録として残る点などが挙げられます。

ABDについて興味を持った方は以下のリンクからマニュアルをDLしてみてください。

(未来型読書法 アクティブ・ブック・ダイアローグ、http://www.abd-abd.com/

<■アクティブ・ブック・ダイアローグの3つのステップ>

①コ・サマライズ: 一冊の本を分担して紙芝居形式でまとめていきます。

②プレゼンリレー: 一人2分~3分でプレゼンリレーを行います。

③ダイアログ: 発表された内容をさらに掘り下げて参加者同士で対話します。


(ii) 選定書籍

 今回の題材書籍は、新型コロナウイルスにおける緊急事態宣言下で、知的創造の場を提供する大学にとっても様々な困難が押し寄せた昨年5月に刊行されています。本書の第2章では、特に人文系、社会学系の研究に着手する際に重要な枠組みとなる考え方が示されています。これは、私たちの多くが着手している自然科学の研究においても考えるべきポイントとなっています。本書では「問を立てる」という研究において必要不可欠な行為を深堀して示して下さっています。博士後期課程で自身の専門性を通じた研究に従事する際や、ToTALで私にとってのリーダーシップを探究する際においても、本書で解説されている問の発見から分析枠組みの構築、仮説検証等のプロセスは重要であると考え、本書を選定し学生間のディスカッションを促進することとしました。

Book:『知的創造の条件』 AI的思考を超えるヒント

(iii) リレー・プレゼンの様子

参加した人数の関係もあり、書籍の第2章から担当を割り振り、パート読みを50分程度行いました。続いて、各自のサマリー6枚をホワイトボードに張り、プレゼンをする場を設けて行きました。今回は制限時間内で1度だけのリーディングで解釈も難しい本だったかも知れませんが、各々が素晴らしいプレゼンテーションをしてくれました。

 オンラインのメンバーは、ZOOMとGoogleスライドを用いて会場と双方向で行いました。オンライン参加メンバーは次のように、スライドを各々で6枚作り発表をしてくれました。図も積極的に作製してうまく分析や構造化を行い、エッセンスを分かり易く解説してくださいました。

    

会場のメンバーの様子を示した写真を下に載せています。多くを話したい気持ちをグッと抑えながら、各人が3分間でポイントをプレゼンしてくれました。

  


(iv) チェックアウト

全てのプレゼンが終了した後に十分な時間が残っていなかったため、チェックアウトの時間を長めに設けてそれぞれが感想を共有する場を全体でもっていきました。特に、本格的に研究活動に従事している大学院生にとっては、大変学びの深い場になったのではないでしょうか。ここでは本の内容の多くを語ることができませんが、ToTAL学生室で読むことができるので興味のある方は利用してみて下さい。

(v) ファシリテータとして

元々、私は読書会が好きで、ABDはもちろん他の読書会にも積極的に参加をしていました。以前、本学ILA主催の池上彰先生に『いい質問』をする会に参加した際に、「読書をしても記憶に残らない」という学生からの質問に対して「読書会をしたらいい」というアドバイスが印象に残り、それからABDに参加するようになったのがきっかけです。実際にやってみると要約してプレゼンしたり、議論したりすることで、1人で行うの読書以上の価値を短時間で得られることができると感じています。また、私の考えるリーダーシップにとってファシリテートのスキルも重要だと考え、1Qではファシリテータの実践を行う授業を履修していました。そこで今回、ABDのお話をいただき挑戦させていただきました。

予め先生方との打ち合わせで本のチョイスを相談していたときに、他にもいくつか候補がありましたが、最終的にToTAL生と深堀して議論してみたいという視点から書籍の決定に至りました。実は、選定書籍は、他のTA先で先生方も交えてLTD(Learning Through Discussion)という手法で一度読書会をやったことがありました。そこで、感銘を受けたためABDでもやってみようと思い、先生方へ推薦しました。

実際にファシリテートしてみると司会から時間配分まで全てのことを行う必要があったため、思ったよりも大変でした。特に、役割を分担するために本を適当な個所で区切る際に難しさを感じました。チェックアウトの際に、本全体のつながりが感じにくかったという意見もあったので、今後の課題として全体像をうまく感じ取れるような役割分担とファシリができたらと思っています。本会が終了した後も、部屋に残って学生間で活発な議論が続いていました。参加者にとって有意義な時間だったのではないでしょうか。

ABDは後期も開催予定です。ToTAL生や学年などを問わず自由に参加できますので、興味があれば気軽に顔を出してみてください。最後に、参加してくださった学生の皆さんありがとうございました。

文責:

篠田泰成 (東京工業大学 リーダーシップ教育院 1期生 2018年11月登録 / 物質理工学院 応用化学系 原子核工学コース 博士後期課程2年)