• 科目分類: リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/Leadership, Followership and Consensus Building(LFCB)
  • 科目名: TAL.W.501 リーダーシップ・グループワーク基礎/Fundamental Group Work for Leadership
  • プログラム名: デザイン思考1-dayワークショップ in 一橋大学/Design Thinking 1-day Workshop in Hitotsubashi University
  • 開催日時: 8/Oct/2018 (Mon) 11:00-18:00

10月8日(月・祝) 、一橋大学マーキュリータワーにてデザイン思考1-dayワークショプを行いました。アイリーニ・ユニバーシティの柏野尊徳さんをファシリテーターにお迎えし、東工大、一橋大の学生32名が6グループに分かれ、約5時間半に渡りデザイン思考の基本を学びました。特に今回の参加者は半数以上が学部生であり、若さならではの斬新なアイデアも飛び出す、非常に活気溢れるワークショップとなりました。
尚、本プログラムは、グローバルリーダー教育院(AGL)「人文社会系道場(山田道場)導入」科目でもあり、ToTAL/AGL所属生に加え、東工大・一橋大の一般学生も参加できるOPEN形式で行われました。

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(1) デザイン思考とは

 デザイン思考とは、イノベーションのための方法論の一つです。ユーザーの声を掘り下げることで、そのコメントの背景や状況を掴み共感することで解決すべき課題設定を行い、人や社会などの第三者視点で問題解決を行います。ここでの「デザイン」とは、単なる製品の色や形ではなく、ユーザーにとっての現状をより良い状態へ変えることを目的に、どうすればいいかを考える行動のことを言います。
 本ワークショップでは、デザイン思考に重要な、発見、詳細化、探索、実験、展開といったプロセスを通し、与えられたテーマに対する現状をどのようにしてより良いものにしていくか考えることで、デザイン思考の一連の流れを体験しました。

(2) テーマ

 今回のテーマは「読書体験を新しくデザイン」するというものでした。出てきたアイデアは製品でもサービスでも、どのような形でも構いません。重要なのは、ユーザーの視点に立ち、良い読書体験をするにはどうすればいいかを考えた成果を出すということでした。

(3) デザイン思考のプロセス

1. 発見

 発見フェーズでは、ユーザーにインタビューすることでユーザーが感じている現状に対する不満を見出します。ここで重要なことはユーザーに同情する(Sympathize)のではなく共感する(Empathize)ことです。「なぜ?」を繰り返すことにより、ユーザーの深いニーズに共感し、ストーリーを作成します。

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2. 詳細化

 詳細化フェーズでは、発見で得られた情報を統合し、課題を明確化します。ここでは、着眼点シートを用い、どのような人が、なぜ、どのようなニーズを持っているかを整理し、グループ内で共有します。

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3. 探索

 探索のフェーズでは、着眼点シートに基づき、ポストイットを使ってアイデアを数多く出し合います。ここでは、質より量を重視し、プロジェクトの可能性を広げます。その後、出たアイデアをグループ分けします。ここでは、ユーザーが得られる効果による分類を行います。その後、グループ分けしたアイデアから、「有用性」、「実現性」、「革新性」という観点でアイデアを選択します。この時、ユーザーが喜んでもらえる「有用性」という観点を重視して選択を行います。

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4. 実験

 実験のフェーズでは、プロトタイプを作成し、実際にユーザーに体験をしてもらい、フィードバックをもらいます。ここで重要なことは、プロトタイプに質を求めないことです。プロジェクトのコンセプトを伝えることのできるものであれば十分なので、できるだけ素早く作成します。体験してもらったユーザーからのフィードバックは「良い点」、「改善点」、「疑問点」、「アイデア」に分類し、プロトタイプの改良を行います。

5. 展開

 展開のフェーズでは、これまでの4つのフェーズを踏まえ、参加者の前で2分間の劇を行います。劇にすることで課題を抱えているユーザーとそれを解決するアイデアをわかりやすく共有することができます。

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「発見」「詳細化」「探索」「実験」「展開」の5つのフェーズをたどることで、各グループ面白いアイデアが出ました。めくる感覚を持つ電子書籍、映画の臨場感溢れる体験をそのままに読める本、本を読みながら電車の窓にメモをしてそれを電子データとして持ち帰ることのできるサービスなど、学部生が多い今回ならではの斬新さがあり、面白いものでした。

(4) 私自身の目的と達成度合い

 ここからは、私個人的な目的と達成度合いについて述べていきます。私が本ワークショップに参加をした理由は、現在活動しているプロジェクトに活かしたいと思ったためです。そのプロジェクトでは、スリランカ国内のシナモン栽培を活性化するため、シナモンを加工する道具を制作しています。この活動に活かすため、デザイン思考の各フェーズの中でも特に「発見」と「実験」について、その意義とやり方を吸収したいと思っていました。その理由は、2019年3月に行う予定の現地調査のため、どのようにインタビューをすればユーザーの深いニーズを掘り出すことができるのかということを学びたいということと、現在行っているプロトタイピングを効果的に行うため、プロトタイプのレベル感と周期を学びたいためです。

 本ワークショップで最も重要だと感じた点は、「発見」フェーズのインタビューのやり方です。時間いっぱいまで質問したと思っても、次の探索のフェーズに入ると、「これも聞いておくべきだった」と感じました。例えば、あるユーザーは本の読み方が書かれている本を選んでいると言っていたので、本の読み方を知りたいのだろうと思ってしまいました。しかし、再度「なぜ?」と聞いてみると、実は本の内容に対する共感を欲していたということが分かりました。このように、ユーザーの発言したことに対して「なぜ?」を繰り返すことにより、その人が無意識に思っているニーズに迫ることができるということを知ったことは、私にとって非常に重要でした。この方法をもとに3月の現地調査の計画を立て、深層ニーズに迫れる調査にしたいと思います。

(5) 総括

 以上が本ワークショップの内容です。本来数日間かけてやるものを5時間半で行なったため、学びきれていない部分もあったかと思いますが、一連の流れを体験できたことで、今後の活動に活かせるものになったかと思います。本ワークショップをもとに、さらにデザイン思考に対する知見を深め、実際の活動に役立てていきたいと思います。

 最後に、お忙しい中、ファシリテーターとして貴重な機会を与えてくださいました、アイリーニ・ユニバーシティの柏野尊徳さんに心より感謝申し上げます。

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 古橋知樹 物質理工学院 (ToTAL 1期生)