(In Japanese only.)
12月9日(水曜日)、本学大岡山キャンパスにて「「リーダーシップ探求ブックダイアローグ」第2回を実施しました。参加者はToTAL所属生とオープンを合わせて計8名であり、学部1年生から博士課程までの幅広い学生が参加しました。ファシリテータとして、私小西が担当いたしました。
アクティブ•ブック•ダイアローグ(ABD)とは
「リーダーシップ探求ブックダイアローグ」において実践されている読書法は、ABDと呼ばれているものです。ABDを一言でまとめると、1冊の本を数人で分割してその場で読むという読書スタイルのことです。参加者は1)書籍の担当パートを章ごとなどにわりふり、2)各自でその場でパートごとに読み、要約をB5用紙6枚で作ります。3)その要約をもとに一人3分ほどのプレゼンを行ったのち、4)書籍についての感想や疑問についてディスカッションを行います。この手法のメリットは、事前準備の必要がない点、全員がその場で読むプロセスを行うため、読書会内での貢献度の差が起こらない点、参加者が作成したレジュメが記録として残る点などが挙げられます。
題材書籍
今回の題材書籍は、今年8月に刊行された森山至貴氏の「10代から知っておきたい あなたを閉じ込める「ずるい言葉」」でした。本書は日常における様々な場面で遭遇しうる「ずるい言葉」について、その問題点と、どのように対処すれば良いのかというヒントがまとめられている書籍です。10代からという表題ではありますが、取り上げられているシチュエーションは多くの学生が 相対した経験のあるものだと思います。リーダーシップを協労と尊重のための素養と解釈した際、コミュニケーションのすれ違いに基づく問題への対処や内省は重要と考え、本書の選定に至りました。
リレープレゼン
書籍はちょうど参加者と同人数分の8章からなっていたため、1人1章分を担当することとし、45分間のパート読みセッションを行いました。その後、各自がまとめた内容をホワイトボードに張り出し、内容のエッセンスについてのプレゼンを行いました。準備発表ともに短い時間でありながら、参加者は紙面の両面を使用する、折り込みやプレゼン中の書き足しなどをうまく利用するなどして印象深いプレゼンテーションを作成していました。内容としては、各章ごとのポイントに加え、同調圧力や「普通」であることの強要に内在している「暴力性」を説明するものが多いように思えました。
ディスカッション内容
プレゼン終了後、課題図書の内容やそれに際して想起された事柄について、2グループに分かれてディスカッションを行いました。ファシリテータである私もディスカッションに参加させていただきました。グループでの議論として、課題図書の内容に準じたものとしてはコミュニケーションのあり方を考える際に、ToTALでも実施したNVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション。相手の言動の「正しさ」を判断するのではなく、自己と相手のニーズをいかに理解するかという点に重きをおいたコミュニケーション実践)実践が有用なのではないかという意見がありました。一方で疑問点として、「ずるい言葉」に相対した時の対処法は、当然表面だけ真似てもうまくいかないもの(ある種の読み解きのスキルが必要)なものであるため、スキルを持つ人と持たない人の間で上下関係が生まれてしまうのではないかという点、「ずるい言葉」を発する人々のうち、少なくない数の人はこうした問題に興味がなく、本書を読まないのではないかという疑問、どのようにしてそうした層に内省の重要性を伝えるのが良いかという点などが挙げられました。
また、ある程度議論が起こったところで、グループ内の意見を集約して全体に共有しました。他のグループからは、「自身が考えていた課題図書に対する感想と全く違った意見があり、他者に対する前提があったことが明らかになり興味深かった」「個人的な経験を参照点にして語ることができたのは面白かった」といった意見がありました。
ファシリテータとして
全体を通じて(私を含めた)参加者の多くが、課題図書から自らも嵌ってしまいがちな問題含みの言葉の、何が問題であるかを言語化するためのヒントを得ていたような気がします。実際クロージングで参加者に感想を伺うと、あとがきにあるような「もやもや」を含め、それぞれの自身の気づきを持ち帰っているような感触がありました。ファシリテータとして、読書会の意義が達成できたように思えました。ここから課題図書について、対人関係におけるモヤモヤに関して対話するための切り口として利用できるのではないかというポテンシャルを感じることができました。
文責:小西 優実(ToTAL 2期生 / 情報理工学院 情報工学系 情報工学コース 修士課程2年)