ToTALプログラムレポート/ToTAL Program Reports

リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/リーダーシップ・グループワーク基礎「未来洞察ワークショップ」を28/Jan, 2/Feb, 3/Febの3日間にわたり開催しました。

Workshop of Future Foresight as a part of “Fundamental Group Work for Leadership”were held on 28/Jan, 2/Feb and 3/Feb.

  • 科目分類: リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/Leadership, Followership and Consensus Building(LFCB)
  • 科目名: TAL.W.501 リーダーシップ・グループワーク基礎/Fundamental Group Work for Leadership
  • プログラム名:未来洞察/Future Foresight
  • 開催日時: 28/Jan/2019(Mon) 18:00-21:00, 2/Feb/2019(Sat)10:00-18:00, 3/Feb/2019(Sun)10:00-18:00

1/28, 2/3~2/4に東工大大岡山キャンパスにて,「未来洞察ワークショップ」が日本総研の粟田恵吾さんのファシリテーションで開催されました.

1. テーマ

今回のテーマは,「(郊外/地方都市の)駅の未来」でした.

現在の駅は,ショッピング・子育て支援・防災の機能など,街インフラへと進化する一方で,人口減少や高齢化が進んでいる郊外や地方都市では,地方自治体の財政破綻や老朽化したインフラの維持困難が叫ばれ始めています.一方,電車・バス・タクシーといった公共交通を含めたMaaS (Mobility as a Service)という交通インフラの今後の有り方も模索され始めました.そこで今回は,2030年の駅の未来を特に郊外や地方都市に焦点を当てて,「駅」を再定義するようなアイディア(機会領域)の創出を目的としました.

2.ワークショップ

(1)Day-1(1月28日(月))18:00-21:00@S422:

未来洞察”とは何か?及びワークショップで行うテーマについて,概要を講義形式にて学ぶ

 1日目は,ワークショップに向け、未来洞察が生まれた背景やその考え方を講義形式にて学びました.現代社会は、ダボス会議以降で言われるようになったVUCA(Volatility-Uncertainty-Complexity-Ambiguity)ワールドに突入をしており,この変化著しい社会で未来を読むことがいかに難しいことであるかということ.そして,この時代の変化というものは,多くの人が考えるように直線的ではなく,いきなり指数関数的に生じる特徴があること.しかし,指数関数的ではあるが,必ずそこには変化するまでの小さな兆しが存在すること.そして,ただ現在起きていることから,論理的に考えて起きることが予想されるような,ありそうな未来を考えるだけではなく,その小さな兆し事象から,目を向けてはいないが起きてもおかしくないような,ありうる未来を考えることが必要となるということを学びました.

 未来洞察の方法は,自分の既知の領域から仮説を立てる,インサイド・アウト発想と自分の既知領域から離れた,知らないことすら知らない,気づいていな領域から仮説立てをするアウトサイド・イン発想を組み合わせて,新しい機会領域の創出及びアイディア化をすることが主な手順であり,講義の後半ではインサイド・アウトの発想の事前課題として出される”未来イシュー”の作り方を学びました.参加者の既知の領域をより充実させるために,豊田自動織機の山梨祐嗣氏さん(R&D統括部)から移動の手段や価値付けの現状と変化について学び,京王電鉄の古賀睦昌さん(経営企画部)と田原慎吾さん(開発推進部)から,実際に京王線を具体例として,郊外の駅の現状について学びました.個人での未来イシューの作成は,ファシリテーターから大枠が6つほど(ヒト(域内)×移動,ヒト(域内)×街づくり,ヒト(域外)×移動,ヒト(域外)×街づくり,モノ×移動,モノ×街づくり) 定められた状態で提供されました.

(2) Day-2(2月2日(土))10:00-18:00 @S422:

グループワークを始める前に,日本総研の小林さんから,”ワークショップの心得”について説明がありました.傾聴の姿勢や気づきを引き出すなどのワークショップでの大事なポイントや,ポストイットの使い方などを教えていただき,実際にグループワークを始める前のオリエンテーションとして非常に参考になりました.その後はグループ内でポストイットを使った自己紹やチーム名決めといったアイスブレイクも盛り込まれており,非常にリラックスした状態でグループワークを始めることができました.

total_20190213_2-1.jpg

・未来イシューの作成

 各メンバーが持ち寄った事前課題を,グループ内で大きな模造紙に張り付けて他のアイディアと関連付けながら共有を行いました.関連付けをして,いくつかのアイディアの仮説のカタマリができたらその仮説群ごとに,何が変化して10年後はどうなっているか意見を出し合い,最終的に各グループ4つずつのグループでの未来シューを作成し,グループ間で質疑応答を含めたプレゼンテーション方式で全体共有を行いました.

total_20190213_2-2.jpg

・想定外社会変化仮説の作成

自分の気づいていない想定外の領域から,変化の兆しを直観的につかみ,そこから仮説立てをするアウトサイド・イン発想をするために,スキャニングと呼ばれる手法を用いました.スキャニングは,始めに各メンバーが個人で,提供された仮説を洞察するための兆し情報(スキャニングマテリアル)を読み,自分が知らなかった、自分の思い込みに挑戦してきたという意味で面白いと感じた記事をピックアップするインプット作業をしました.次にグループ内でメンバーが選んだ記事について紹介した後に,KJ法を駆使することで記事を統合して,共通する変化の方向性を見出し「想定外の社会変化仮説」としてまとめるスループット作業を行いました。

(3) Day-3(2月3日(日))10:00-18:00 @S422:

・強制発想による機会抽出

Day-2で作成した、”未来イシュー”と”想定外社会変化仮説”を掛け合わせて、この2つの事柄が同時に起きた時/出会った時に想起される様々な事象を考えます。この時の2つの仮説はとても異なるもので、同時に起きることを考えることが難しいように思えますが、文字通り、”強制的”にアイディアを”発想”します。メンバーは、アイディアをポストイットに書き留め、ホワイトボードに作成した”未来イシュー”×”想定外社会変化仮説”のマトリクスに貼り付けます。始めは、この作業がなかなかうまく行きませんが、いくつかアイディアを強制発想したり、グループのメンバーや他グループのアイディアを眺めてたりしているうちにだんだんと慣れて行き、各グループ共にたくさんのポストイットでホワイトボードが埋め尽くされていました。

total_20190213_2-3.jpg

・アイディアエーションと未来シナリオ作成

最後のステップとして、強制発想で導出したアイディア群を機会領域として統合し、未来シナリオを作成します。アイディアのうち、ワクワクするもの、インパクトのあるものなどの有望そうなアイディアをいくつかピックアップします。そして、それらのアイディアを中心として、各アイディア間のコンテクストを読み関連づけます。まとまったら、そこから機会領域を創出し、シナリオを考えていきました。このシナリオは、ワークショップの集大成として、全体にプレゼンテーションで発表を行いました。

最終的に各グループは以下のようなシナリオを想定しました

古橋さん吉田さん馬頭さん(チーム名:Apple) ⇒「野菜をペットにする生活を展開する駅」「高齢者や妊婦や病気を持っている人など、使う人によって設備が変化する駅」

小坂さん篠田さん高橋さん (チーム名:KQ)⇒「離島に「死」をテーマとした、水と共に生きる非日常体験駅」

佐野さん田原さん村井さん富沢さん (チーム名:今から褒め上手)⇒「伝統を身につけ旅をする若者を引きつける駅」

total_20190213_2-4.jpg

3. このワークショップに参加して

まだあまりワークショップに参加するという経験があまりなく,始まる前は少し緊張をしていましたが,グループになってアイディアを出しあっていくうちに,グループワークを楽しめるようになっていました.なんといっても,未来洞察の考えをワークショップで実際に体験するという貴重な体験ができてうれしく思います.修士の学生は,研究活動を行なっていることもあり,論理的にものごとを考えて,次にどのようなことが起きそうかと,ありそうな未来を考えることは慣れていると思います.しかし,今回のような,自分の領域から離れたところから,発想を飛ばしてアウトサイド・イン発想を行うことはあまり体験したことが無いため,このワークショップは自分に新しい思考方法を定着させるという面でも良い体験になりました.

最後に,日本総研の粟田さんと小林さん,豊田自動織機の山梨さん,京王電鉄の古賀さんと田原さんには,ワークショップをファシリテートして頂いたり、情報提供をして頂いただけでなく,我々がワークショップ中に生き詰まった時に,一緒に考えてくださったり,助言をしてくださったりと,本当に感謝しています.おかげさまで有意義な3日間のワークショップを過ごすことができました.ありがとうございました.

total_20190213_3.jpg

(文責:小坂二郎 生命理工学系生命理工学コースM1 ToTAL 1期生)