2026年8月1日(土)に、アントレプレナーシップ醸成ワークショップ「UXデザインを経験し、身につけよう!」を開催しました。
| 該当するアントレプレナーシップ科目 | ENT.L201 学士リーダーシップ・グループワーク基礎A(0-1-0) ENT.V203 学士価値創造グループワーク基礎C(0-1-0) ENT.L501 修士アントレプレナーシップ・グループワーク特論(0-1-0, GA1M) ENT.L505 修士アントレプレナーシップ・グループワーク基礎(0-2-0, GA0M/GA1M) ENT.L601 博士アントレプレナーシップ・グループワーク特論(0-1-0, GA1D) ENT.L605 博士アントレプレナーシップ・グループワーク基礎(0-2-0, GA0D/GA1D) TAL.S505/509 社会課題の認知ワークショップA/C(0-1-0, GA0M) TAL.W502/503 リーダーシップ・グループワーク基礎 I/II(0-2-0, GA0M/GA1M) |
| ファシリテーター | コンサルタント 岡本行司 |
| 開催日時 | 2026年8月1日(土) 13:00-17:00 |
| 開催場所 | 大岡山キャンパス 南4号館 S4-202 |
概要
本講義では、身近な商品を題材として、ユーザーの行動を観察し、そこから潜在的なニーズや課題を発見し、解決策をプロトタイプとして形にするまでの一連のUX(User Experience)デザインのプロセスを学習しました。
講義だけでなく、実際のユーザー行動の観察、グループでのディスカッション、プロトタイプの制作、そして最終プレゼンテーションまでを行う実践的なワークショップとなっています。
内容
1. イントロダクション・オリエンテーション
● はじめに講師から自己紹介とこれまでのバックグラウンドについて説明があり、その後、本講義で扱うUXデザインの考え方や、ワークショップ全体の流れについて説明を受けた。
● 特に、ユーザーを観察する際には、単に目立った行動だけを見るのではなく、「なぜその行動を取ったのか」「その行動の背景にはどのような考えや習慣があるのか」まで5W1Hの考えで掘り下げて考えることの重要性が説明された。
● また、観察した事実と、そこから推測したユーザーの思考を区別しながら整理することも重要なポイントとして扱われた。


2. ユーザー行動の観察
● 続いて、4~6人程度のチームに分かれ、各チームで1名の「試食役」を決定した。今回はコンビニエンスストアで販売されている食品を題材とし、試食役が実際に商品を開封し、食べ終えるまでの一連の様子を他のメンバーが観察した。
● 観察では、普段であれば意識せずに見過ごしてしまうような、下記項目の細かな行動まで記録した。さらに、試食中の様子を動画で撮影し、繰り返し見直すことで、その場では気付かなかった動作についても確認した。
・どのようにパッケージを開封するのか
・商品をどのように持つのか
・どの順番で食べるのか
・食事中にどのような動作を行うのか
・どの場面で手が止まるのか、あるいは迷いが生じるのか


3. ユーザー行動の整理と課題発見
● 観察後は、記録した行動をチーム内で整理し、それぞれの行動の背景にあるユーザーの思考や意図について考察した。この作業では、単に「使いにくそうだった」「食べにくそうだった」と結論付けるのではなく、観察された具体的な行動から、どのようなユーザー体験上の課題が存在するのかを段階的に掘り下げていった。実際に取り組んでみると、このプロセスは想像以上に難しいものであった。
● 人間の行動は、その人自身の経験や習慣、文化的背景などさまざまな要因の影響を受ける。今回のチームでは留学生が試食役を担当したこともあり、普段自分たちが「当たり前」と考えている商品の使い方や食べ方が、必ずしもすべての人にとって共通ではないことにも気付かされた。そのため、自分自身の常識や先入観をいったん取り除き、観察された一つひとつの行動について「なぜこのような行動をしたのだろうか」と考える必要があった。90分という十分な時間が用意されていたものの、議論を深めるほど新たな疑問や解釈が生まれ、UXにおける「観察」の奥深さを実感した。


4. アイデア発想・プロトタイピング
● ユーザー行動の分析から課題を整理した後は、その課題を解決するためのアイデアをチーム内で検討した。さらに、考えたアイデアを言葉だけで説明するのではなく、実際のプロダクトを想定したプロトタイプとして形にした。
● 会場には100円ショップなどで入手できるさまざまな工作材料が用意されており、それらを自由に組み合わせながら制作を行った。
● 紙や身近な素材を使った簡易的なものであっても、実際に形にすることで、頭の中だけでは気付かなかった問題点や改善点が見えてくる。また、チームメンバー同士でも完成イメージを共有しやすくなり、プロトタイピングの重要性を体験的に理解することができた。久しぶりに工作をするような感覚もあり、自分たちの考えたアイデアが徐々に形になっていく過程は、本講義の中でも特に印象に残る時間であった。


5. プレゼンテーション
● 最後に、各チームが制作したプロトタイプについて全体発表を行った。
● 発表では、単に完成したプロダクトを紹介するだけではなく、下記の一連の流れを2分という短い時間の中で説明することが求められた。
→ ユーザーのどのような行動を観察したのか
→ そこからどのような思考や課題を読み取ったのか
→ その課題をどのようなアイデアで解決しようとしたのか
→ その結果、どのようなプロトタイプを制作したのか
● 限られた発表時間の中で、観察からプロダクト制作に至るまでの過程をすべて説明するためには、情報を取捨選択し、聞き手にとって理解しやすい順序で整理する必要がある。そのため、UXデザインだけでなく、必要な情報を簡潔かつ正確に相手へ伝えるプレゼンテーション能力についても実践的に学ぶ機会となった。


感想
● 今回の講義を通して特に印象に残ったのは、UXデザインにおける「観察」の難しさである。一見すると、ユーザーが商品を使用している様子を見て、その問題点を考えるという作業は単純に思える。しかし実際には、目に見えた行動だけから安易に結論を出すのではなく、その背景にある理由や習慣、前提まで考えながら課題を整理する必要があった。特に、人によって行動の基準や「当たり前」が異なることを意識すると、自分自身の経験や常識を基準としてユーザーを理解してはいけないことに気付かされた。実際の行動を丁寧に観察し、その事実を出発点としてユーザーの体験を考えることの重要性を学ぶことができた。
● また、発見した課題に対してアイデアを考えるだけでなく、実際にプロトタイプとして形にすることで、アイデアを具体化することの面白さも体験できた。簡単な工作材料であっても、形にしてみることで新しい問題点が見えたり、チーム内での議論が進んだりすることが印象的であった。
● さらに、最後のプレゼンテーションでは、観察から課題発見、アイデア発想、プロトタイプ制作までの過程を限られた時間で説明する必要があり、「何を伝えるべきか」を整理して簡潔に表現する力の重要性も実感した。
● 今回のワークショップは、UXデザインについて知識として学ぶだけではなく、「観察する」「考える」「形にする」「伝える」までを一連のプロセスとして体験できる講義であり、非常に学びの多い機会となった。

報告者
生命理工学系生命理工学コース、ToTAL登録生(8期生)、M2、中村仁俊


