掲載:2020年7月6日

(*in Japanese)

社会課題の認知 / プロフェッショナルと価値創造 I(第4回):「進化するFinTechは金融や社会に何をもたらすのか?Part 2」を2020年6月26日に行いました。

•科目分類/Group of Course:社会課題の認知 /Recognition of Social Issues
•科目名/Course: TAL.S502 プロフェッショナルと価値創造 I / Professionals & Value Creation I
•プログラム名/Program:「進化するFinTechは金融や社会に何をもたらすのか?Part 2」/ How does the evolving FinTech affect finance and society? Part 2
•ゲストスピーカー /Guest Speaker: 星野英志、日本カントリーヘッド Finetiq Limited / Hideshi Roger Hoshino, Japan Country Head, Finetiq Lmited.
•開催日時/Date & Time: 26/Jun (Fri) 18:00-19:30

2020年6月26日(金)、ZOOMにてフィネテック・リミテッド 日本カントリーヘッド 星野英志さんをお招きし、「進化するFin Techは金融や社会に何をもたらすのか?」のPart 2が行われました。学生からも活発に質問が寄せられ、海外送金における新たな方法やブロックチェーンの仕組みを詳細に伺い、また通貨の信用についても深く思考する時間となりました。

(1) 海外送金の仕組みと新たな方法:

通常の海外送金における課題、送金・受け取り相手それぞれの銀行+中継銀行2つの合計4つの銀行を介することで、手数料が上がるということをまずご説明頂いたあと、この仲介を減らす方法として、新たなテクノロジーによるソリューションのご紹介いただきました。

例1:TransferWise

入金元、送金先それぞれに銀行口座を持つTransfer Wiseが、それぞれの国内で起こっている、「送りたい・受け取りたい」をマッチングさせ、国内送金のみで取引を完結させるという仕組み。アメリカにいるAさんから、日本にいるBさんに送金されているようで実際には別の取引で日本で送金しているCさんのお金がBさんに振り込まれる、というものです。

これは一社だけが間に入るので手数料が安いこと、為替市場を通さず、売り買いの差額もないことがメリットとして挙げられます。

例2 :暗号通貨・Bitcoin

暗号技術を用いたダイレクトな個人間取引で、完全オンラインで国や通貨を超えた送金が可能です。取引も10分以内に完結しますが、価値が変動するためBitcoinの市場リスクを取る必要があります。(仕組みについては後半で詳しくレポートしています!)

(2) 信用創造

金の価値が($35/oz)どの通貨とも結びついていたブレトン・ウッズ体制では、物の価値が金に対してどういう価値があるかが基準でしたが、ニクソンショックで金との交換をやめてしまい、金という担保(=信用)がなくなったことで、貨幣のあり方が変化したとのこと。

その後は、通貨の価値を政府が担保し、価値をメンテナンスし、取引をする相手・自分間で価値の同意に至ることで法定通貨が形成されます。通貨の価値が上がると物の値段が下がるデフレになるように、通貨の供給量を変化させることで景気のコントロールが可能になるなど、必ずしも悪いことばかりではないと星野さんは言います。

ここで重要なのは金から国が保証するように、信用の源泉が変化したということです。現金は政府が信用を保証していますが、例えば事前にチャージするタイプの電子マネーではその管理をしている会社が信用を担保し、ユーザーはそのリスクを負っていることになります。

先ほども話題に出た暗号通貨は中央管理者がおらず、有効なハッシュを生成するnonceを見つけて帳簿をとりまとめ、その帳簿をユーザー全員で管理することで不正や改ざんが事実上不可能となっています。政府や金ではなくテクノロジー、技術的な暗号化によって取引が安全となること(まさにFinTech!)が価値を担うこと、信用の裏付けになる点で、全く新しい変化です。決済のほかに投機目的も多いBitcoinですが、取引するときに、1Bitcoinがいくらという価値のことを考えても、信用が何に基づいているかという信用リスクのことを考えている人は少ないと思うという、星野さんからの鋭い指摘がありました。

(3) Q&A

講義の最中からチャットで非常に活発な意見交換や質問があがり、特に政府と技術以外に貨幣の価値を担保できるものの有無、暗号通貨のシステムの更新、暗号通貨の価値を通貨に固定することの意味など、信用とテクノロジーを中心とした質問が目立っていました。

新興国と先進国の現金、暗号通貨を比較しながら「信用」についてお話が進んでいき、私たちの身の回りにあるお金について、思考の解像度を上げていただけるセッションへと発展していきました。

(4) 感想

私はいわゆるデジタルネイティブなどと言われる世代ではありますが(96年生まれ)、お金が関わるということで慎重になり、実態も知らないままこれまでFinTech分野を避けてしまっていました。星野さんのお話を伺っていく中でFinTechに関する体系的な知識の習得はもちろん、従来、自分が持っていたFinTechに対するバイアスが何によるものなのか、自分の価値観に向き合う時間ともなりました。接触が控えられ、キャッシュレスを推し進める動きも活発な中、今回の講義はこれから変化していく時代に必要な視座を与えて下さるものであったととても感じました。

(5)終わりに

今回はコロナウイルスの影響により、ZOOM開催ではありましたが、チャット機能を活用しながら双方的な形式でFinTechの詳細や信用創造について学ぶことが出来ました。

お忙しい中2回に渡ってお話をして下さった星野さんに厚く御礼申し上げます。

(文責:鹿島理佳子 環境・社会理工学院 社会・人間コース M1 ToTAL/OPEN生)