・科目分類: 社会課題の認知/Recognition of Social Issues
・科目名: プロフェッショナルと価値創造B/D/Professionals and Value Creation B/D
・プログラム名: 健康は口から〜口腔の可能性を考えてみよう〜
・ファシリテーター: 矢野孝星 LOTUS DENTAL CLINIC院長/東京医科歯科大学非常勤講師 歯学博士
・開催日時: 3/Feb/2022 18:15-20:15
・場所: オンライン

本科目は、分野を問わず、最新・最先端の課題への価値創造(イノベーション)を行っている国内外のプロフェッショナルから話題提供をいただき、対話を行うことを目的としています。最終回は、歯科医師であり起業家であり研究者でもある矢野先生にお越しいただきました。なお、今回の講義は、ToTAL1期生の篠田さんの企画・プロデュースによって実現しました。
今回は、ToTAL登録生の他、「卓越」プログラムの学生、学部生含め、15名の参加がありました。

矢野先生は、東京医科歯科大学歯周病学分野にて博士号を取得された後、現在はハプラス歯科院長と東京医科歯科大学の非常勤講師を勤めていらっしゃいます。また、QWELL株式会社にて、歯周病と実は関連が深い糖尿病の予防をサポートするサプリメントの販売もされています。

そんな矢野先生からの話題は、以下の3つでした。

1. ヒトにおける口腔の機能
口腔とは、口を開いたときに見える範囲を指します。飲食はもちろん、ヒトにとっては表情や発話などのコミュニケーションの手段としても重要であるため、ヒトと他の哺乳動物の間では周辺の筋肉や骨格の構造が大きく異なるとのことでした。ヒトと様々な動物の頭蓋骨を比較するとその構造の違いは歴然でした。

写真:哺乳動物とヒトの頭蓋骨そして矢野先生

2. 全身に影響を及ぼしうる歯周病やオーラルフレイルと、その予防の重要性
口腔内、とくに歯間には無数の細菌が存在しています。歯磨き不足などによってこれらの細菌が過剰に増殖すると、歯茎は炎症を起こし、歯周病になります。歯周病になると、口腔内細菌は体内に侵入し、血中をめぐって全身でさまざまな疾患を引き起こす原因になるとのことでした。
このような恐ろしい歯周病の前段階には、嚥下や咀嚼、口臭等の軽度な衰え(オーラルフレイル)が見られます。オーラルフレイル自体は、生活に大きな支障を与えません。しかし、口腔内の違和感が食事やコミュニケーションをおっくうに感じさせることで、社会的な孤立などの重大な問題につながりうる点で、予防や早めの対処が重要だそうです。それにも関わらず、オーラルフレイルに対する理解や知識はまだまだ周知されていないのが現状です。毎日の歯磨きがいくつもの疾患を予防する手段であり、「たかが歯磨き、されど歯磨き」であると感じました。

3. サイエンスとアートの交わり
これは、最も印象的な話題でした。相反しているようにも見られるサイエンスとアートですが、どちらか一方ではその良さは最大になりません。歯科医師である矢野先生は、欠損した歯の再生前後の写真を例に、サイエンスがアートを最大化させる可能性をお話くださいました。普段から研究活動や行う我々や、ToTALでイノベーションを学ぶ学生は、クリエイティブさが求められる場面が多数あります。そんな我々に重要な示唆であるように感じました。

(文責:千葉のどか 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学コースM2、ToTAL 4期生)