(in Japanese only.)

リーダーシップ、フォロワーシップ、合意形成/リーダーシップ・グループワーク基礎「未来洞察ワークショップ」を18/Jan, 25/Jan, 30/Jan, 31/Jan, 5/Febの5日間にわたりオンラインで開催しました。

・ Group of Course:Recognition of Social Issues
・ Course:TAL.S506 Recognition of Social Issues Workshop
・ Program:Future Foresight Workshop
・ Date & Time:Day 1; 18/Jan (Mon) 18:00-21:00, Day 2; 25/Jan (Mon) 18:00-21:00, Day 3; 30/Jan (Sat) 13:00-18:00, Day 4; 31/Jan (Sun) 13:00-17:00, Day 5; 05/Feb (Fri) 18:00-21:00, 2021
・ Facilitators :Future Design Lab, The Japan Research Institute Ltd.
Keigo Awata, Atsuko Ichioka, Motoki Kobayashi, Atsuko Ichioka, Shigeki Matsuki

未来洞察について

未来洞察とは何でしょうか。未来洞察と未来予測は異なります。未来予測は直線的に続くであろう未来を考えるのに対し、未来洞察は想定外の変化も考慮した未来に少しでも近づけるように、決して直線上にはない未来の片鱗を捉えます。

*オンライン付箋ツール: https://miro.com/ja/online-sticky-notes/

今回は新型コロナウイルスの影響でオンラインにて5日間のワークショップが開催されました。テーマは「学びの未来」。10年~15年後ではどのような学びが行われているのかを考えました。ZoomとオンラインホワイトボードMiroを使用しながら行う中で、学びの未来について考えることは大変示唆的だと思います。昨年からすればまさに今はコロナによって想定外の変化に置かれた未来であり、その実感とともに学びの未来について未来洞察を行えた今年のワークショップはとても貴重だったのではないでしょうか。

以下、未来洞察のステップに従って5日間を振り返ります。

①事実や仮説の延長線上で「未来イシュー」を設定

まずは現在存在している学び、これから浸透しそうな学びを各自調査し、それらを統合して学びの変化の見立てを作ります。そしてグループの中でそれらをさらに統合し、未来イシュー(未来の変化を説明する論点仮説)にまとめます。具体的事柄から抽象的変化の見立てへ、未来の学びの全体的な変化を捉える作業です。1つ1つの具体的な事柄を考え付くことと、具体的事象の抽象度を一段階上げ、他の事象とのつながりを見つけ出すことでは別の力が求められます。

オンラインホワイトボードを最大限活用して整理していきました。

*オンライン付箋ツール: https://miro.com/ja/online-sticky-notes/

②スキャニングにより「想定外社会変化仮説」を設定

スキャニングマテリアルと呼ばれる、学びの未来とは全く関係のない、短い記事を100個読み、そこから数個を根拠にして、新たな「想定外社会変化仮説」を生み出します。このスキャニングマテリアル、読んでいるだけで大変面白く、脳のいろんなところを刺激してくれるような記事ばかりでした。一見関係のなさそうな事柄が後からいい味を出してくることは小説を読んでいるとよくありますが、このスキャニングマテリアルから想定外社会変化仮説を作り出す過程はまるで小説家になったような気分で、一見ありえないような未来、しかしないとは言い切れない未来をグループで考えていきます。この作業は①と違って飛躍した発想力が求められると思いました。それぞれのマテリアルを拡張してそれが重なった部分に面白い仮説が現れるイメージです。

*オンライン付箋ツール: https://miro.com/ja/online-sticky-notes/


③未来イシューと想定外社会変化仮説とを掛け合わせ新たな機会領域(未来シナリオ及びアイデア)を描き出す

①で考えた未来イシューと②で考えた想定外社会変化仮説をそれぞれ掛け合わせ、予想外の未来を踏まえた学びの未来を強制発想していきます。①で踏まえた未来像を軸に②の想定外社会変化仮説を織り交ぜてくと、面白い化学反応を起こし、通常では考えつかないような学びの未来のアイデアが次々と生まれていきます。特に面白い機会領域(未来のシナリオ、アイデア)を具体化し、グループごとに発表を行いました。各グループの発表後、質問が飛び交い、さらなる議論に発展することもありました。

*オンライン付箋ツール: https://miro.com/ja/online-sticky-notes/

そして最終日にはこの機会領域をさらに深掘り、そのシナリオやアイデアを実際にその学びを行っている人や学びのサービスまで落とし込んで発表しました。ここでも各グループ個性が出て、紙芝居のように紹介するグループ、絵本仕立てのグループ、実際に未来の人が私たちに語り掛ける場面を作るグループなど学びの未来をより現実として捉えられるような発表を行っていました。この発表も予想外の未来を具体化、可視化するという点において素晴らしい効果があると思いました。つい私たちは未来を語るとき、抽象的な説明を行い、細かい点はごまかしてしまいがちです。しかしここまで細かい点まで考えて初めて分かることもあり、具体的シナリオから学びの未来全体を見直すことの面白さに気づけました。


感想

5日間未来洞察にどっぷりつかると普段の思考では決してたどりつけないようなアイデアに出会うことができ、素晴らしい時間を過ごさせていただきました。完全に個人的な感想ですが、未来洞察は少しアート鑑賞に似ている気がします。先日、現代アート作品を鑑賞しましたが、一見わけのわからないものが並んでいる中に想像力を働かせてつながりを見出し、そこに意味を見つけるという点で未来洞察と同じような頭の使い方をしました。その思考のレールに自分の普段考えていることを載せると、全く新しいアイデアにたどり着けるという点でも似通っているかもしれません。

話を戻しますと、未来洞察の面白さは想定外な未来を考え、私たちの凝り固まった価値観を客観的に捉えなおすことにあると思います。10年前を振り返ると、今とは異なる技術、価値観が一般的だったことと同じように、10年後にはおそらく今とは異なる価値観が浸透し、それを当たり前として生きているのでしょう。頭では理解していても、その認識のもと未来を考えることがいかに難しいか、今回実感することができました。

また、未来洞察はテーマの本質について深く考えることにもつながっています。当初私は、未来洞察は未来について考えるものだと思っていました。これはもちろん正しいのですが、未来洞察において今ある学びって結局何なのだろうという疑問や未来での変化は学びの本質的な変化なのだろうかという疑問がどうしても生じるのです。5日間で「学びとは何か」という本質的な問いに抽象的アプローチではなく具体的アプローチで挑戦することができるのも、この未来洞察の魅力であったと考えます。

過去、現在、未来の連続した時間の流れの中に自らがいることをほんの少しばかり認識できるようになり、抽象と具体を行き来して学びの本質を見据えるきっかけになったという点でただ本を読み、勉強することと一線を画す体験をこの未来洞察においてさせていただきました。

最後になりますが、今回ファシリテーターを務めてくださった日本総研の方々、私のような他大生、学部生にもこのように広く学びの門戸を開いてくださったToTALの先生方に厚く御礼申し上げます。

(文責:宮川一花 一橋大学 商学部 学部1年、OPEN参加)